30 / 39
第三章 リシュとザンヴァルザン妃王の君9
しおりを挟む「おっはよう!シズハちゃん!」
朝、身支度を済ませて自室の扉を開けると、満面の笑みを浮かべた僧侶の女性が私を出迎えていた。さらりとした銀色の長い髪と豊満なバストが印象的な美しい年上の僧侶だ。
「…何してんの?」
朝っぱらからテンションの高い人の相手は人生で苦手な行動トップ10に入る私は苦い顔で尋ねた。
「お誘いに来たの!一緒に朝ごはんをたべたいからね」
「…ええ…?」
めっちゃニコニコしている。
「…あなた、私が何をしたかわかってるの?」
「ええ。私の胸に手刀で風穴を開けて殺した」
ニコニコしたままはっきりと答えた。どんな話題にもニコニコしていて胡散臭い。
この僧侶――メイリスという女性と出会ったのは一か月前のペスタ地方での任務の時である。彼女の言う通り私は任務の邪魔をしてきた冒険者の彼女を思いっきり殺した。否、殺したはずだった。
実はメイリスは二百年ほど前に死亡していたアンデッドだったのである。かつて、ペスタ王国の騎士だったメイリスはとある策略によって命を落としかけたところを禁断魔法とやらでつなぎ止められ、二百年もの歳月をかけてアンデッドとしてよみがえったらしい。彼女はその正体を隠しながら冒険者ギルドで僧侶として活動を開始。そして、私に身体を回収されたことをきっかけにこの魔王軍に鞍替えするということになったのだ。どういうことだよ。
「…てか、あなたペスタにいたんじゃなかったの?」
「あの支部長さんにお願いして異動させてもらったの。身体は一通り診てもらったし、魔王様に正式な契約書も出さなきゃならないし。会いたい顔もいるからね」
「会いたい顔?」
「そう。あなたよ」
そう告げたメイリスは私の鼻の頭に指を突き付けた。
「私ぃ?というか、冒険者の人間がよくまぁ魔族だらけのとこに来ようと思ったわね」
「あら、私は二百年も前から人間やめてるアンデッドなのよ?つまりは魔族の仲間。魔王城にいる方がむしろ自然じゃない?」
「ぐ、ぐぅ…」
ぐうの音しか出なかった。
「それに、昔から興味があったのよ。人間の敵である魔族がどんな暮らしをしてるのかね。そうしたら、こんなにも皆和やかで至れり尽くせりで居心地がいいんだもの。驚いたわ」
魔王軍が居心地いいだなんて。ギルドとやらがどんなところか知らないけどとんだ適応力を持ってるのね。
「おまけに、こんなかわいい娘が魔勇者なんてやってるんだもの。ますます興味がわいちゃうわ」
そう言いながらメイリスは私の頬に手を当てた。
「ちょっ!何触ってんのよ!」
ヒヤッとした感覚に驚いて私は思いきり払いのけた。
「あら?そんなに冷たかった?」
人間の体温がまるで感じられなかった。やはりアンデッドだ。
「ごめんね。冷え性で」
「冷え性って…あなたアンデッドでしょうが」
「そうだったわね。てへ」
メイリスはわざとらしく舌を出した。小粋なアンデッドジョークのつもりなのだろう。
「さあさあ。早く朝ご飯食べに行きましょ!今朝のオススメはベーコンエッグマフィンですって!」
「あ!ちょっと!」
メイリスは私の手を掴み、強引に引っ張っていった。強引系陽キャだ。マジ苦手なタイプだ。手は冷たいし。
まったく、朝から面倒なことになったものだわ。最近、胸やけがひどいし。
朝、身支度を済ませて自室の扉を開けると、満面の笑みを浮かべた僧侶の女性が私を出迎えていた。さらりとした銀色の長い髪と豊満なバストが印象的な美しい年上の僧侶だ。
「…何してんの?」
朝っぱらからテンションの高い人の相手は人生で苦手な行動トップ10に入る私は苦い顔で尋ねた。
「お誘いに来たの!一緒に朝ごはんをたべたいからね」
「…ええ…?」
めっちゃニコニコしている。
「…あなた、私が何をしたかわかってるの?」
「ええ。私の胸に手刀で風穴を開けて殺した」
ニコニコしたままはっきりと答えた。どんな話題にもニコニコしていて胡散臭い。
この僧侶――メイリスという女性と出会ったのは一か月前のペスタ地方での任務の時である。彼女の言う通り私は任務の邪魔をしてきた冒険者の彼女を思いっきり殺した。否、殺したはずだった。
実はメイリスは二百年ほど前に死亡していたアンデッドだったのである。かつて、ペスタ王国の騎士だったメイリスはとある策略によって命を落としかけたところを禁断魔法とやらでつなぎ止められ、二百年もの歳月をかけてアンデッドとしてよみがえったらしい。彼女はその正体を隠しながら冒険者ギルドで僧侶として活動を開始。そして、私に身体を回収されたことをきっかけにこの魔王軍に鞍替えするということになったのだ。どういうことだよ。
「…てか、あなたペスタにいたんじゃなかったの?」
「あの支部長さんにお願いして異動させてもらったの。身体は一通り診てもらったし、魔王様に正式な契約書も出さなきゃならないし。会いたい顔もいるからね」
「会いたい顔?」
「そう。あなたよ」
そう告げたメイリスは私の鼻の頭に指を突き付けた。
「私ぃ?というか、冒険者の人間がよくまぁ魔族だらけのとこに来ようと思ったわね」
「あら、私は二百年も前から人間やめてるアンデッドなのよ?つまりは魔族の仲間。魔王城にいる方がむしろ自然じゃない?」
「ぐ、ぐぅ…」
ぐうの音しか出なかった。
「それに、昔から興味があったのよ。人間の敵である魔族がどんな暮らしをしてるのかね。そうしたら、こんなにも皆和やかで至れり尽くせりで居心地がいいんだもの。驚いたわ」
魔王軍が居心地いいだなんて。ギルドとやらがどんなところか知らないけどとんだ適応力を持ってるのね。
「おまけに、こんなかわいい娘が魔勇者なんてやってるんだもの。ますます興味がわいちゃうわ」
そう言いながらメイリスは私の頬に手を当てた。
「ちょっ!何触ってんのよ!」
ヒヤッとした感覚に驚いて私は思いきり払いのけた。
「あら?そんなに冷たかった?」
人間の体温がまるで感じられなかった。やはりアンデッドだ。
「ごめんね。冷え性で」
「冷え性って…あなたアンデッドでしょうが」
「そうだったわね。てへ」
メイリスはわざとらしく舌を出した。小粋なアンデッドジョークのつもりなのだろう。
「さあさあ。早く朝ご飯食べに行きましょ!今朝のオススメはベーコンエッグマフィンですって!」
「あ!ちょっと!」
メイリスは私の手を掴み、強引に引っ張っていった。強引系陽キャだ。マジ苦手なタイプだ。手は冷たいし。
まったく、朝から面倒なことになったものだわ。最近、胸やけがひどいし。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる