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占いの館
しおりを挟む三人で訪れた占いの館は、何とも胡散臭い雰囲気で満載だった。
「おぉ…おぉ…! 見える…見えるぞ…!」
「………」
「何が見えるんですか!?」
「うー?」
フードを深くかぶった老婆が、水晶玉に手をかざし、何かを感じ取ったようだ。
マーガレットは興奮気味で質問する。
「そなたの願い、叶う日近し…いずれ良いことが起こるじゃろう…」
「うっそ、やったじゃん! カレン! 両想いだって!」
「うっ! うっ!」
「いや、恋愛って決まったわけじゃ…」
手始めに占ってもらったのはカレンの運勢という、何とも漠然とした範囲。それにも関わらずそれを都合よく解釈して、はしゃぐ似た者親子。
そんなカレン達の様子に、老婆はにっこりと笑った。
「お嬢さんは恋愛を成就させたいんじゃな? ならば、このアイテムがその手助けをしてくれるじゃろう」
老婆が取り出したのは、真っ赤なチョーカーだった。
「通常はこのぐらいの価格じゃが…今回は特別に、三割引きじゃ」
「買った!」
「うっ!」
「買いませんけど!?」
そんなものでうまくいったら、ここまで悩んでないわ!と、カレンは叫びたかった。
「なんでぇ? 買おうよぉ、カレン~!」
「いやいやいや、冷静になろうよマーガレット…」
「だって、これでグレンの愛が手に入るなら、安いもんじゃん!?」
「あのねぇ、バカにしないでよ……アレの愛は、もっと安いっ!!」
「めっちゃ貶すじゃん」
カレンは大真面目に答えた。なのにマーガレットは笑いを堪えている。今のどこに笑う要素があったのか問いたい。
「じゃあさ、これがあれば超~ラブラブになれるんじゃない? ねぇ、欲しくなった?」
「なりません! そんなに言うなら、自分が買えばいいじゃないっ!」
「うちは旦那と超~絶ラブラブなんで、必要ありませ~ん。どこかの誰かさんとは違ってね!」
「ゔっっ…」
マーガレットはどうしてもカレンにそのチョーカーを買わせたいらしい。完全に面白がっている時の表情だった。
くだらない言い合いはしばらく続く。その間、占い師の老婆はニコニコと笑っているだけで、赤子も騒ぐことなく大人しかった。
それが妙だと気付くのに、二人は時間を要してしまう。赤子の好奇心を舐めていたのだ。
疑問を抱いた時には、なぜか赤子の手にはチョーカーが握られていて、あろうことかそれを___咥えていた。
「キャア!? ペッしなさい! ペッ! バッパイだよ!!」
「あ~あ~!」
「……これは買い取りかな」
すっかりヨダレまみれになってしまったチョーカー。
カレンの抵抗も空しく、結局購入する羽目になったのだった。
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