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第三章 鳥籠詩
四話 修行
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◇
『白百合芽唯の修行日記 一日目』
怪しい手つきで髪を触られ、嬲られ、悲鳴を上げながら蹂躙された挙句、三つ編みになった。
もうお嫁に行けない。
『白百合芽唯の修行日記 二日目』
いかがわしい手つきで霊装時の着物を剥がされ、一糸纏わぬ姿でただ着物を凌辱され続けるのを見ている事しか出来なかった。
もうお嫁に行けない。
『白百合芽唯の修行日記 三日目』
魑魅魍魎の顔つきで自慢の白銀の刀が、黒の何かで色を塗りたくられてしまった。
もうお嫁に行けない。
「よし、大体こんなもんかのう」
「いや、外見しか変わってないんだけど」
菊の言葉に芽唯は抗議した。
渚は隣で笑いこけている。
「あっははは!芽唯、あんた随分とかっこよくなっとるやないかー!似合うでー」
「いや、似合う似合わないの問題じゃないから。もう三日経っちゃってんだけど」
芽唯の自慢の長く艶のある黒髪は一本の三つ編みとなり、純白の着物は黒を主体にして左の肩口から袖までは白、右はネイビーブルーとなった。
背中と肩が開けているから、何処か形状はドレスにも近いかもしれない。
そして黒の手套を両手に取り付け、刀は黒の刃となり、質感すらも変わっているような気がする。
芽唯は見事にビフォーアフターを遂げたのであった。
「さて。遊びはこれくらいにしておくとして」
「遊びだったの!?ちょっと菊ちゃん!さすがに怒るわよ!?」
「誰が菊ちゃんじゃ誰が。まあ待て。お主の外見を変えたのには、ちゃんと意味がある」
「はぁ?本当でしょうね?」
菊は庭の長椅子に座り、頬杖をつきながら説明を始める。
「そもそも魂鎮メの霊装とは礼装、つまり礼服を意味するのじゃ。これがどういう事かというとじゃな。霊を祓う上で礼節を重んじ、死者に対して罰当たりにならんようにというのが元々の意味じゃった。何も戦う術が全てではないのじゃ」
菊は長椅子に片手を着き直して説明を続ける。
「とは言っても、霊装は基本的には除霊が目的で使われる。意味よりも目的が先んじるのは当然の事じゃな。じゃがお主はいかん。髪も結わず着物も素体のまま。刀などドノーマルのフェラーリじゃ。見ているこっちが恥ずかしい」
「いや、私にはアフターの方が罰当たりに見えるんだけど」
「戯けっ!!お主は何も分かっておらん!!霊たちが求めるのは礼節などではない、サービス精神じゃっ!!」
「いやもう今までの時間返してよ」
力説する方向性が変わってしまったので、今まで真面目に聞いていた自分が馬鹿らしくなってきた芽唯。
コホンと一つ咳ばらいをして、菊は話を再開する。
「とまあ、冗談はさておき」
「ねえ、どっからが冗談だったの?」
「今回お主の外見を変えたのは、特性そのものに新たな一面を加えるという目的があったからじゃ。何も銀が悪い訳ではないのじゃが、お主の場合もっと自分に見合う力が存在すると思ってのう。それは、お主自身の望みでもある筈じゃ」
「私自身の、望み」
そうだ。
刀を粉々に砕かれて、結局は誰も守れなくなって。
だから芽唯は望んでいた。
決して砕かれない力が、強さが欲しいと。
そうじゃなければ、守りたい大切な人たちを守る事も出来ない。
もう、そんな思いは二度としたくない。
「……私は、夜御坂さんを助け出せるだけの力が欲しい。他は何にもいらない」
「そうか、それがお主の心の奥にある願いじゃな。ならば願うがよい。その刀に、強さを求めるがよい。お主にはまだまだ伸びしろがある。さて、後は実戦あるのみじゃな」
「お願いします、菊さん!」
そうして実戦を踏まえた特訓は、この後十二時間ほど続いた――。
『白百合芽唯の修行日記 一日目』
怪しい手つきで髪を触られ、嬲られ、悲鳴を上げながら蹂躙された挙句、三つ編みになった。
もうお嫁に行けない。
『白百合芽唯の修行日記 二日目』
いかがわしい手つきで霊装時の着物を剥がされ、一糸纏わぬ姿でただ着物を凌辱され続けるのを見ている事しか出来なかった。
もうお嫁に行けない。
『白百合芽唯の修行日記 三日目』
魑魅魍魎の顔つきで自慢の白銀の刀が、黒の何かで色を塗りたくられてしまった。
もうお嫁に行けない。
「よし、大体こんなもんかのう」
「いや、外見しか変わってないんだけど」
菊の言葉に芽唯は抗議した。
渚は隣で笑いこけている。
「あっははは!芽唯、あんた随分とかっこよくなっとるやないかー!似合うでー」
「いや、似合う似合わないの問題じゃないから。もう三日経っちゃってんだけど」
芽唯の自慢の長く艶のある黒髪は一本の三つ編みとなり、純白の着物は黒を主体にして左の肩口から袖までは白、右はネイビーブルーとなった。
背中と肩が開けているから、何処か形状はドレスにも近いかもしれない。
そして黒の手套を両手に取り付け、刀は黒の刃となり、質感すらも変わっているような気がする。
芽唯は見事にビフォーアフターを遂げたのであった。
「さて。遊びはこれくらいにしておくとして」
「遊びだったの!?ちょっと菊ちゃん!さすがに怒るわよ!?」
「誰が菊ちゃんじゃ誰が。まあ待て。お主の外見を変えたのには、ちゃんと意味がある」
「はぁ?本当でしょうね?」
菊は庭の長椅子に座り、頬杖をつきながら説明を始める。
「そもそも魂鎮メの霊装とは礼装、つまり礼服を意味するのじゃ。これがどういう事かというとじゃな。霊を祓う上で礼節を重んじ、死者に対して罰当たりにならんようにというのが元々の意味じゃった。何も戦う術が全てではないのじゃ」
菊は長椅子に片手を着き直して説明を続ける。
「とは言っても、霊装は基本的には除霊が目的で使われる。意味よりも目的が先んじるのは当然の事じゃな。じゃがお主はいかん。髪も結わず着物も素体のまま。刀などドノーマルのフェラーリじゃ。見ているこっちが恥ずかしい」
「いや、私にはアフターの方が罰当たりに見えるんだけど」
「戯けっ!!お主は何も分かっておらん!!霊たちが求めるのは礼節などではない、サービス精神じゃっ!!」
「いやもう今までの時間返してよ」
力説する方向性が変わってしまったので、今まで真面目に聞いていた自分が馬鹿らしくなってきた芽唯。
コホンと一つ咳ばらいをして、菊は話を再開する。
「とまあ、冗談はさておき」
「ねえ、どっからが冗談だったの?」
「今回お主の外見を変えたのは、特性そのものに新たな一面を加えるという目的があったからじゃ。何も銀が悪い訳ではないのじゃが、お主の場合もっと自分に見合う力が存在すると思ってのう。それは、お主自身の望みでもある筈じゃ」
「私自身の、望み」
そうだ。
刀を粉々に砕かれて、結局は誰も守れなくなって。
だから芽唯は望んでいた。
決して砕かれない力が、強さが欲しいと。
そうじゃなければ、守りたい大切な人たちを守る事も出来ない。
もう、そんな思いは二度としたくない。
「……私は、夜御坂さんを助け出せるだけの力が欲しい。他は何にもいらない」
「そうか、それがお主の心の奥にある願いじゃな。ならば願うがよい。その刀に、強さを求めるがよい。お主にはまだまだ伸びしろがある。さて、後は実戦あるのみじゃな」
「お願いします、菊さん!」
そうして実戦を踏まえた特訓は、この後十二時間ほど続いた――。
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