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第三章 鳥籠詩
序幕 炭坑の影
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◇
豊永早紀。
関西生まれ、関西育ち。
幼少期からの霊感体質。
歳は17歳、高校二年生。
現在、母親と二人暮らし。
先週に入った辺りから、音信不通。
行き先、不明。
原因、理由、共に一切不明――。
情報を一度、洗い出して精査する。
そうして同じく高校二年生の瀬名実里は、突然の友人の失踪の謎を追い掛けていた。
フワッとしたショートボブは明るめの茶髪で、小柄な体格の実里は周りからよく小動物に例えられた。
一番多かったのは、ロボロフスキー・ハムスターだったか。
個人的にはもっと大きな、アフリカゾウくらいの大御所になりたかったのだが。
そんな実里はごく一般的なアイドルヲタクで、最近まで推していたのは人気アイドルグループのLOVE※。
だがメンバーの相次ぐ脱退によって、今はもうLOVE※の人気度はかなり落ちていた。
実里は大変ショックだったが、でも今はそれどころではない。
「っと、あかんあかん。もっと集中して考えな!」
人よりもキーの高い地声でそう言い、実里は再び推理に勤しんだ。
早紀は仲の良いグループ内の子で、特に目立った事もしない模範的な生徒。
大人しい、けれどその霊感体質のせいかよく他のグループの子らにからかわれていたりもした。
もしそれが理由で姿を消したと言うならば、最悪思いつめての自殺の可能性もある。
でもそこまでの酷い仕打ちを見た事がないし聞いた事もなく、本人も大して気にしたような素振りは見せていない。
孤立しているような事もなく、寧ろグループ内ではみんな興味津々で実里もその一人だった。
心霊話を聞くのが楽しかったくらいだ。
う~んと実里は頭を悩ませる。
何か決定的な情報でもあれば、話は早いのだが。
現在、学校帰りに図書館に来ていた実里。
情報収集は今時ネットでもいいのだが、何かもっとこう、物的な何かが欲しかった。
だから実里は当てになるのかどうかも分からないような、過去の新聞の記事をひたすらに漁っている。
だが決して探偵ごっこをしている訳ではない。
警察の捜査が一向に進まない今、事件と真剣に向き合っているのだ。
そんな中で、ふと一つの新聞記事の文章が目に入る。
「……これ、神隠し事件やって。なになに?」
『昭和〇〇年〇月〇日、一人の女子高生が忽然と姿を消した』
見出しからしても今の状況と酷似している。
そのまま実里は食い入るように記事を読み進める。
「何でもその女子高生は日頃から霊感があると言い張っており、行方不明となった当日も霊が見える事を証明する為に、とある心霊スポットへと赴いたそうだ。ふむふむ」
今のところいい感じで真相に向かって行っている、実里はそう確信した。
「その心霊スポットというのは、関西では有名な『カナリア炭坑』である。この炭坑は戦前に採掘されていた地で、当時起きた大地震によって何人もの人々が犠牲になった忌まわしき場所である。……って、犠牲者おんのに忌まわしいとか表記すんなや。あほちゃうか」
ここは図書館の為、一人静かに記事に文句を言う実里。
「えーっと、それからというもの、この地に足を踏み入れた者の目撃証言は絶えなかった。勿論、当時生き埋めになった人たちの、無念である、と。ほんまかいな、話盛ってんとちゃうやろなー?」
一頻り読み終えた実里は考える。
もしもこれが本当の事だったとして、果たして早紀が行方不明になった事と繋がりはあるのかと。
カナリア炭坑自体は有名だ、オカルト好きなら誰でも知ってるくらい関西では一二を争うスポットである。
場所もそこまで遠くはない、行こうと思えば今からだって行ける。
ただ問題は、自分に除霊能力がないという点だ。
無闇に乗り込んで自分まで行方不明になっては元も子もない。
でも、興味はあった。
「……う~ん、どないしよ。まあ人生、行き当たりばったりってな!」
そうして実里は週末の休みを利用して、一人カナリア炭坑へと向かう事を決めた――。
「……気味悪いわ~」
炭坑を目の前にして、最初の一言が口から洩れる。
電車とバスを経由し、人里離れたこの地までおおよそ二時間ほどで辿り着いた。
時刻は現在、午後一時。
まだ明るい時間帯の筈なのに、やけに薄暗く感じる。
空気がとにかく重い。
リュックにはたくさんのお菓子を持参した。
腹が減っては戦は出来ぬ、それが実里の座右の銘だから。
実里は途中で一緒に購入しておいた懐中電灯を頼りに、立ち入り禁止の札を無視して炭坑の入口から中へと入る。
天井はなく吹き抜けのような構造で空が見えるから光は届いており、真っ暗で何も見えない訳ではなかった。
中央にはトロッコ用のレールが敷かれており、中はまるで迷宮のようだ。
誰かが入ったのだろう、両脇の高い壁にはいくつもの落書きがされていたがバンクシーの物ではない。
ただ一緒に点々とお札も貼られているものだから、ちょっと怖いなと実里は思った。
「……さ、早紀~?おるか~?」
弱気な小声で友人の名前を呼びながら、実里はレール沿いに進む。
中は何処まで行ってもレールが敷かれているだけで、これは深くまで進んでしまったら戻って来れないかもしれない。
何か目印でもあったら良かったのだが、精々壁の落書きくらいだろうか。
だが奥に進むにつれて落書きの数は少なくなっていく、当然当てには出来ない。
「おーい早紀~、実里が迎え来たで~。おったらおったで返事せえや~」
そうして実里は、友人を探し続けた。
しばらくして、実里は分かれ道に辿り着く。
三方向のどれを選ぶか、実里はキョロキョロと見回して吟味する。
「あかん、右は絶対にあかん。なんかめっちゃ寒気するわ……。左行こ」
そうして左通路を選択した実里は、暫く声を掛けながらも道なりに進み続ける。
するとすぐに行き止まりに差し掛かってしまった。
「え~、ほんまかいな!あかん、今日ウチついてないわ~……」
仕方なく実里は来た道を戻ろうとして振り向く。
しかしその振り向いた先に、ポツリと人影が見えたような気がした。
先ほどまで誰もいなかった筈の道である、どう考えてもおかしい。
実里はもしかしたら友人が迷子になっていたのかもしれない、たまたまこのタイミングで鉢合わせたのかもしれない。
そう思って声を掛けてみる事にした。
「……あ、早紀?早紀やねんな?も~、ウチめっちゃ心配したんやからな~!」
早紀であって欲しい。
そんな願望の元に声を発した訳だが、良く見るとどうやらシルエットが早紀のものではない。
それはどう見ても、男性のシルエットだった。
「……」
実里の声にも返答はなく、シルエットは一瞬ゆらりと動きを見せた。
ビクッとなって尻込みする実里だが、思い切って懐中電灯の光を向ける。
「……だ、誰や!?」
光をパッと勢いよく向けた。
すると照らされた場所には誰もおらず、道上にレールが続くだけだった。
「あ、あれ?見間違いやった?」
人影一つ見つけられなかった実里は、気のせいだと思い安堵の息を漏らす。
「は~。あかんわ、パニックになってもうた。よし!こっからは落ち着いて――」
『……タスケテ……』
突如、背後から聞こえてきたのは男の掠れた声。
実里は慌てて振り返る。
その際、足元のレールに靴が引っ掛かってしまい、その場で転倒してしまった。
「いたた……。な、なんやオッサン!ビックリしてまうや、ろ……」
見上げた実里は、背筋を凍らせる思いとなった。
作業服に身を包む男性の姿は血塗れで、所々が破けており。
右腕と左足がおかしな曲がり方をして、真っ青な顔からは血が滴っていた。
『……タスケテ……』
「……ひっ……!」
実里は尻餅をつきながらも懸命に後ずさる。
うまく声も発せない。
その作業服の男性は、遅々とした動きでじっくりと実里の方へ歩み寄って来る。
足が変な方向を向いてるから歩き方も自然と歪なものになっていて、左足を引きずるように近寄って来た。
「……こ、来ないで……」
生きていられるような見た目はしていない。
実里は生まれて初めて、死者に遭遇したのだ。
そして生まれて初めて、恐怖を知った。
全身の毛が逆立つ、まさにそんな状態であった。
『……クルシイ……イタイ……』
男の霊はそう言いながらも、どんどん実里に近づいてきた。
足が、全身が震えてしまい、未だ立つことすらままならない。
このまま近寄られたらどうなってしまうのだろう。
実里の脳裏に自然と、最悪の発想が過る。
「……いや……いやっ」
とうとう男のぐちゃぐちゃに折れ曲がった右手が、実里の身体に触れる。
そんな時だった。
「『刀匠 鋼鍛冶』――乾坤✖剣舞」
頭上高くから舞い降りると同時に、その人物は男の霊を真っ二つに斬り裂いた。
その衝撃で、大きな余波が風となって辺りに吹き荒れる。
思わず実里は両腕を、顔を守るようにして前に突き出した。
その人物に目を向けると、どうやら女性のようだった。
長い黒髪は一本の三つ編みにされており、着用している服は黒を基調とした和服だが肩の部分などが開けていて、とても斬新なものに見える。
両手には黒の手套が着用され、その右手には先ほど男の霊を斬り裂いた黒の刃の刀が握られていた。
そしてゆっくりとその人物が実里の方へ振り返り、声を掛けてくる。
「――あんた、死にたいの?別にどうでもいいけど、自殺なら他のとこでやって」
見放すように実里にそう言ったのは、新たな戦い方の形を見出したばかりの。
発展途上の四世家当主、白百合芽唯であった――。
豊永早紀。
関西生まれ、関西育ち。
幼少期からの霊感体質。
歳は17歳、高校二年生。
現在、母親と二人暮らし。
先週に入った辺りから、音信不通。
行き先、不明。
原因、理由、共に一切不明――。
情報を一度、洗い出して精査する。
そうして同じく高校二年生の瀬名実里は、突然の友人の失踪の謎を追い掛けていた。
フワッとしたショートボブは明るめの茶髪で、小柄な体格の実里は周りからよく小動物に例えられた。
一番多かったのは、ロボロフスキー・ハムスターだったか。
個人的にはもっと大きな、アフリカゾウくらいの大御所になりたかったのだが。
そんな実里はごく一般的なアイドルヲタクで、最近まで推していたのは人気アイドルグループのLOVE※。
だがメンバーの相次ぐ脱退によって、今はもうLOVE※の人気度はかなり落ちていた。
実里は大変ショックだったが、でも今はそれどころではない。
「っと、あかんあかん。もっと集中して考えな!」
人よりもキーの高い地声でそう言い、実里は再び推理に勤しんだ。
早紀は仲の良いグループ内の子で、特に目立った事もしない模範的な生徒。
大人しい、けれどその霊感体質のせいかよく他のグループの子らにからかわれていたりもした。
もしそれが理由で姿を消したと言うならば、最悪思いつめての自殺の可能性もある。
でもそこまでの酷い仕打ちを見た事がないし聞いた事もなく、本人も大して気にしたような素振りは見せていない。
孤立しているような事もなく、寧ろグループ内ではみんな興味津々で実里もその一人だった。
心霊話を聞くのが楽しかったくらいだ。
う~んと実里は頭を悩ませる。
何か決定的な情報でもあれば、話は早いのだが。
現在、学校帰りに図書館に来ていた実里。
情報収集は今時ネットでもいいのだが、何かもっとこう、物的な何かが欲しかった。
だから実里は当てになるのかどうかも分からないような、過去の新聞の記事をひたすらに漁っている。
だが決して探偵ごっこをしている訳ではない。
警察の捜査が一向に進まない今、事件と真剣に向き合っているのだ。
そんな中で、ふと一つの新聞記事の文章が目に入る。
「……これ、神隠し事件やって。なになに?」
『昭和〇〇年〇月〇日、一人の女子高生が忽然と姿を消した』
見出しからしても今の状況と酷似している。
そのまま実里は食い入るように記事を読み進める。
「何でもその女子高生は日頃から霊感があると言い張っており、行方不明となった当日も霊が見える事を証明する為に、とある心霊スポットへと赴いたそうだ。ふむふむ」
今のところいい感じで真相に向かって行っている、実里はそう確信した。
「その心霊スポットというのは、関西では有名な『カナリア炭坑』である。この炭坑は戦前に採掘されていた地で、当時起きた大地震によって何人もの人々が犠牲になった忌まわしき場所である。……って、犠牲者おんのに忌まわしいとか表記すんなや。あほちゃうか」
ここは図書館の為、一人静かに記事に文句を言う実里。
「えーっと、それからというもの、この地に足を踏み入れた者の目撃証言は絶えなかった。勿論、当時生き埋めになった人たちの、無念である、と。ほんまかいな、話盛ってんとちゃうやろなー?」
一頻り読み終えた実里は考える。
もしもこれが本当の事だったとして、果たして早紀が行方不明になった事と繋がりはあるのかと。
カナリア炭坑自体は有名だ、オカルト好きなら誰でも知ってるくらい関西では一二を争うスポットである。
場所もそこまで遠くはない、行こうと思えば今からだって行ける。
ただ問題は、自分に除霊能力がないという点だ。
無闇に乗り込んで自分まで行方不明になっては元も子もない。
でも、興味はあった。
「……う~ん、どないしよ。まあ人生、行き当たりばったりってな!」
そうして実里は週末の休みを利用して、一人カナリア炭坑へと向かう事を決めた――。
「……気味悪いわ~」
炭坑を目の前にして、最初の一言が口から洩れる。
電車とバスを経由し、人里離れたこの地までおおよそ二時間ほどで辿り着いた。
時刻は現在、午後一時。
まだ明るい時間帯の筈なのに、やけに薄暗く感じる。
空気がとにかく重い。
リュックにはたくさんのお菓子を持参した。
腹が減っては戦は出来ぬ、それが実里の座右の銘だから。
実里は途中で一緒に購入しておいた懐中電灯を頼りに、立ち入り禁止の札を無視して炭坑の入口から中へと入る。
天井はなく吹き抜けのような構造で空が見えるから光は届いており、真っ暗で何も見えない訳ではなかった。
中央にはトロッコ用のレールが敷かれており、中はまるで迷宮のようだ。
誰かが入ったのだろう、両脇の高い壁にはいくつもの落書きがされていたがバンクシーの物ではない。
ただ一緒に点々とお札も貼られているものだから、ちょっと怖いなと実里は思った。
「……さ、早紀~?おるか~?」
弱気な小声で友人の名前を呼びながら、実里はレール沿いに進む。
中は何処まで行ってもレールが敷かれているだけで、これは深くまで進んでしまったら戻って来れないかもしれない。
何か目印でもあったら良かったのだが、精々壁の落書きくらいだろうか。
だが奥に進むにつれて落書きの数は少なくなっていく、当然当てには出来ない。
「おーい早紀~、実里が迎え来たで~。おったらおったで返事せえや~」
そうして実里は、友人を探し続けた。
しばらくして、実里は分かれ道に辿り着く。
三方向のどれを選ぶか、実里はキョロキョロと見回して吟味する。
「あかん、右は絶対にあかん。なんかめっちゃ寒気するわ……。左行こ」
そうして左通路を選択した実里は、暫く声を掛けながらも道なりに進み続ける。
するとすぐに行き止まりに差し掛かってしまった。
「え~、ほんまかいな!あかん、今日ウチついてないわ~……」
仕方なく実里は来た道を戻ろうとして振り向く。
しかしその振り向いた先に、ポツリと人影が見えたような気がした。
先ほどまで誰もいなかった筈の道である、どう考えてもおかしい。
実里はもしかしたら友人が迷子になっていたのかもしれない、たまたまこのタイミングで鉢合わせたのかもしれない。
そう思って声を掛けてみる事にした。
「……あ、早紀?早紀やねんな?も~、ウチめっちゃ心配したんやからな~!」
早紀であって欲しい。
そんな願望の元に声を発した訳だが、良く見るとどうやらシルエットが早紀のものではない。
それはどう見ても、男性のシルエットだった。
「……」
実里の声にも返答はなく、シルエットは一瞬ゆらりと動きを見せた。
ビクッとなって尻込みする実里だが、思い切って懐中電灯の光を向ける。
「……だ、誰や!?」
光をパッと勢いよく向けた。
すると照らされた場所には誰もおらず、道上にレールが続くだけだった。
「あ、あれ?見間違いやった?」
人影一つ見つけられなかった実里は、気のせいだと思い安堵の息を漏らす。
「は~。あかんわ、パニックになってもうた。よし!こっからは落ち着いて――」
『……タスケテ……』
突如、背後から聞こえてきたのは男の掠れた声。
実里は慌てて振り返る。
その際、足元のレールに靴が引っ掛かってしまい、その場で転倒してしまった。
「いたた……。な、なんやオッサン!ビックリしてまうや、ろ……」
見上げた実里は、背筋を凍らせる思いとなった。
作業服に身を包む男性の姿は血塗れで、所々が破けており。
右腕と左足がおかしな曲がり方をして、真っ青な顔からは血が滴っていた。
『……タスケテ……』
「……ひっ……!」
実里は尻餅をつきながらも懸命に後ずさる。
うまく声も発せない。
その作業服の男性は、遅々とした動きでじっくりと実里の方へ歩み寄って来る。
足が変な方向を向いてるから歩き方も自然と歪なものになっていて、左足を引きずるように近寄って来た。
「……こ、来ないで……」
生きていられるような見た目はしていない。
実里は生まれて初めて、死者に遭遇したのだ。
そして生まれて初めて、恐怖を知った。
全身の毛が逆立つ、まさにそんな状態であった。
『……クルシイ……イタイ……』
男の霊はそう言いながらも、どんどん実里に近づいてきた。
足が、全身が震えてしまい、未だ立つことすらままならない。
このまま近寄られたらどうなってしまうのだろう。
実里の脳裏に自然と、最悪の発想が過る。
「……いや……いやっ」
とうとう男のぐちゃぐちゃに折れ曲がった右手が、実里の身体に触れる。
そんな時だった。
「『刀匠 鋼鍛冶』――乾坤✖剣舞」
頭上高くから舞い降りると同時に、その人物は男の霊を真っ二つに斬り裂いた。
その衝撃で、大きな余波が風となって辺りに吹き荒れる。
思わず実里は両腕を、顔を守るようにして前に突き出した。
その人物に目を向けると、どうやら女性のようだった。
長い黒髪は一本の三つ編みにされており、着用している服は黒を基調とした和服だが肩の部分などが開けていて、とても斬新なものに見える。
両手には黒の手套が着用され、その右手には先ほど男の霊を斬り裂いた黒の刃の刀が握られていた。
そしてゆっくりとその人物が実里の方へ振り返り、声を掛けてくる。
「――あんた、死にたいの?別にどうでもいいけど、自殺なら他のとこでやって」
見放すように実里にそう言ったのは、新たな戦い方の形を見出したばかりの。
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