転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています~ヴァルハラで死合いましょう~

夢咲まゆ

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第28章~魔剣士の台頭~

第67話

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「……ええ? それ餌なのか?」
「みたいだな。何だかよくわからん生体だ」

 ホズも呆れていたが、下手に手を出して敵対されても嫌だったのか、剣を下ろして亀を観察していた。

 余程お腹が空いていたのか、亀は結晶をどんどん平らげていく。かなりたくさん切り出したはずだったのに、気付いたら結晶は残り半分になってしまっていた。

「あの……これどうしましょう? このままじゃ泉を渡れません」
「……そうだな。この亀が泳いで渡らせてくれるならともかく、そもそも酸に強いのかもわからん」
「溶けてしまったら可哀想ですもんね……。悔しいですけど、やっぱり一度引き返して泉を渡る小道具を用意してきた方がいいでしょうか」
「お前のヤドリギに、枝を伸ばしてもらうことはできないか? それを渡っていくのが一番手っ取り早い気がするが」
「え、ええと……どうでしょう? 一応やってみますけど、このヤドリギは俺の言うことを聞いてくれないことも多くて……」

 そう答えた時、亀が一声「グア」と鳴いた。

 結晶を食べ尽くして満足したのか、今度はじっとこちらに視線を送ってくる。

 そしてチラリと目配せした後、ゆっくりと向きを変えてのしのし歩き始めた。

「ええと……あれ、ついて来いって言ってます?」
「そうかもしれんな。とりあえず様子を見てみるか」

 一定の距離を保ちつつ、その亀について行くことにした。

 亀はゆっくりとしたスピードで洞窟を歩き、大樹のある最深部に戻った。

 そして泉の縁まで来たかと思うと、躊躇うことなくザブンと泉に入っていった。
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