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第25章~魂との戦い~
第32話
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「お前、相変わらずしれっと寝ようとするよね」
兄がこちらを見下ろしながら言う。
「一人で寝たいならそれでもいいけど。それなら私はこっちのベッドで寝るね」
「えっ……!?」
ぎょっとして半身を起こしたら、兄はさっさと隣のベッドに入ってしまった。
てっきり、当たり前のようにこっちに入ってくると思っていたから肩透かしを食らった気分だ。たまには自分から誘ってこいということか。いろいろ迷惑もかけたし。
「あの、兄上……」
「…………」
「その……」
何と言えばいいかわからず、アクセルは視線を泳がせた。直接口に出すのは恥ずかしいし、だからといって放っておかれるのは寂しい。入浴前のキスでは全然足りなかったのに。
アクセルは自分の枕を掴み、そろりとベッドから下りた。そして兄のベッドに近づき、小声で尋ねた。
「あの……い、いいでしょうか……?」
「いいって、何が?」
「だから、その……」
兄がこちらを見上げた。青い瞳と目が合った。
それだけのことが今のアクセルには無性に恥ずかしく、自分の顔を抱えていた枕に押し付けた。
「もう……相変わらずお前は、肝心なことがなかなか言えないね。何度も場数踏んでるのに、未だに恥ずかしいの?」
「それは……だって……」
「まあ、ある意味安心するけどね。いつまでも初心で恥ずかしがり屋なのが、お前の特徴だし。変わってなくてよかった」
「っ……」
「さ、おいで」
布団をめくり、中に誘ってくれる兄。
アクセルは隣に枕を置き、そろそろと掛け布団に潜り込んだ。大好きな兄の香りに包まれて、気持ちがふわっと和らいだ。
兄がこちらを見下ろしながら言う。
「一人で寝たいならそれでもいいけど。それなら私はこっちのベッドで寝るね」
「えっ……!?」
ぎょっとして半身を起こしたら、兄はさっさと隣のベッドに入ってしまった。
てっきり、当たり前のようにこっちに入ってくると思っていたから肩透かしを食らった気分だ。たまには自分から誘ってこいということか。いろいろ迷惑もかけたし。
「あの、兄上……」
「…………」
「その……」
何と言えばいいかわからず、アクセルは視線を泳がせた。直接口に出すのは恥ずかしいし、だからといって放っておかれるのは寂しい。入浴前のキスでは全然足りなかったのに。
アクセルは自分の枕を掴み、そろりとベッドから下りた。そして兄のベッドに近づき、小声で尋ねた。
「あの……い、いいでしょうか……?」
「いいって、何が?」
「だから、その……」
兄がこちらを見上げた。青い瞳と目が合った。
それだけのことが今のアクセルには無性に恥ずかしく、自分の顔を抱えていた枕に押し付けた。
「もう……相変わらずお前は、肝心なことがなかなか言えないね。何度も場数踏んでるのに、未だに恥ずかしいの?」
「それは……だって……」
「まあ、ある意味安心するけどね。いつまでも初心で恥ずかしがり屋なのが、お前の特徴だし。変わってなくてよかった」
「っ……」
「さ、おいで」
布団をめくり、中に誘ってくれる兄。
アクセルは隣に枕を置き、そろそろと掛け布団に潜り込んだ。大好きな兄の香りに包まれて、気持ちがふわっと和らいだ。
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