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第23章~間幕・透ノ国へ~
第20話
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小休止と言ってもカフェみたいなおしゃれな店があるわけではなく、誰もいない空き家に勝手に侵入して腰を落としているだけだ。
「気付いたことというか……今更だけど、ここはやっぱり不気味な場所だな」
「不気味って?」
「これだけ歩き回っているのに、誰にも遭遇しないじゃないか」
どれだけの時間歩き回ったかはわからない――が、人どころか動物や神獣なども全く見かけないのはさすがにおかしいだろう。
一応、自分たちの故郷らしき村も訪れてみたものの、肝心の村人は誰もいない。懐かしい家や景色は再現されていたが、そこで生活しているはずの人が一人もいないという奇怪っぷりだった。
そのせいで、懐かしさよりも不気味さの方を強く感じてしまう。
「誰もいないのは今に始まったことじゃなくない? ラグナロク中に来た時も、誰にも遭遇しなかったし」
と、兄が何でもないことのように言う。
「透ノ国には、もともと予言の巫女しか住んでいなかったんだ。でもラグナロクで消えちゃったから、とうとう誰もいなくなった。もし誰かがいるとしたら、それは目の錯覚か幻影、あるいは間違って迷い込んじゃった誰かだよ」
「そうか……」
「そもそも、こんなところに間違って迷い込むような人なんていないけどね」
休憩は終了とばかりに、兄が立ち上がった。
「それよりも私は、これより更に下に何が広がっているかの方が気になるな」
「……これより更に下っていうのは?」
「大穴の下の地下世界のことだよ。お前も、今まで歩いてきた中で何度か見てきたでしょう? 小島の真ん中に結構な大穴が空いているのを」
言われて、アクセルは顎に手を当てた。
「気付いたことというか……今更だけど、ここはやっぱり不気味な場所だな」
「不気味って?」
「これだけ歩き回っているのに、誰にも遭遇しないじゃないか」
どれだけの時間歩き回ったかはわからない――が、人どころか動物や神獣なども全く見かけないのはさすがにおかしいだろう。
一応、自分たちの故郷らしき村も訪れてみたものの、肝心の村人は誰もいない。懐かしい家や景色は再現されていたが、そこで生活しているはずの人が一人もいないという奇怪っぷりだった。
そのせいで、懐かしさよりも不気味さの方を強く感じてしまう。
「誰もいないのは今に始まったことじゃなくない? ラグナロク中に来た時も、誰にも遭遇しなかったし」
と、兄が何でもないことのように言う。
「透ノ国には、もともと予言の巫女しか住んでいなかったんだ。でもラグナロクで消えちゃったから、とうとう誰もいなくなった。もし誰かがいるとしたら、それは目の錯覚か幻影、あるいは間違って迷い込んじゃった誰かだよ」
「そうか……」
「そもそも、こんなところに間違って迷い込むような人なんていないけどね」
休憩は終了とばかりに、兄が立ち上がった。
「それよりも私は、これより更に下に何が広がっているかの方が気になるな」
「……これより更に下っていうのは?」
「大穴の下の地下世界のことだよ。お前も、今まで歩いてきた中で何度か見てきたでしょう? 小島の真ん中に結構な大穴が空いているのを」
言われて、アクセルは顎に手を当てた。
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