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第22章~トーナメント・第五死合い~

第53話

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「それができる人って、意外と少ないと思うな。男なんて特に、そういうことを照れ臭がって上手く言えない人が多いから……」

 そうかな……と首をかしげていると、兄はこちらに手を伸ばして頭頂部辺りを撫でてきた。

 何かと思っていたら、こう話を続けてきた。

「頭踏みつけちゃったのもごめんね。気づいたら手だけじゃなく足まで出てて。キレたら見境なくなるところも、どうにかしたいんだけど……」
「あ、ああ……いや、それはいいんだ。兄上を怒らせるようなことをした俺が悪いんだからさ。もう気にしないでくれ」
「……うん……」
「そんなことより、俺次の死合い頑張るからな。兄上の代わりに、ナダルをボコボコにしてくるからしっかり応援しててくれよ?」

 強引に話を終わらせ、アクセルは作っておいた猪のシチューを温め直した。そして硬めのバゲットをスライスし、シチューと一緒に盛りつけた。

「好きなだけ食べてくれ。食欲がなければ明日に回してもOKだ」

 そう言って兄と一緒に食事をとった。

 その間、兄は特に目立ったことは言わなかったが、何か別のことを考えているのか、時々上の空になっていた。

***

 数日後。何だかんだでナダルとの死合い当日がやってきた。

 ――これでよし、と。

 いつもより早めに起床し、いつもと同じ朝のトレーニングをした後、念入りに武器の様子を確認する。

 ピピも応援するようにこちらに近づき、ふわふわの身体を擦り寄せてきた。

「ありがとう、ピピ。俺頑張ってくるからな」

 うんうん、と頷いてくれるピピ。
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