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第22章~トーナメント・第五死合い~

第30話

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 だから兄は先回りして、危なくなりそうな連中を片っ端から粛清してしまうのではないか。やりたくて刃傷沙汰を起こしているのではなく、可愛い弟を守るためにやむを得ず過激な方法をとっているのではないか。

 だとしたら……俺が兄上を止める権利はないのかもしれない……。

「……っ……」

 様々な感情がぐちゃぐちゃになって押し寄せてきて、気付いたらボロボロ泣いていた。

「ぴー、ぴー……」

 ピピが慰めるように、すんすんと鼻を近づけてくる。それでも涙は止まらなくて、アクセルは何度も目を拭った。

 ――とにかく、このまま兄上を放っておくわけにはいかない……。

 ここはヴァルハラだから、報復で何人も殺傷したとて牢屋にぶち込まれることはない。

 だが頻度が多くなれば、さすがに「問題あり」と判断されてヴァルキリーにも目をつけられる。獣化ではないから破魂まではいかない……と思うが、それっぽい施設に送られてしまう可能性は十分にある。

 ただでさえ自分たちは「予言の巫女」の息子という特殊な立ち位置にいるのだ。つい忘れがちだが、普通の戦士より目をつけられやすい立場なのは確実である。

 万が一兄が「透ノ国」に幽閉されて、永遠に離れ離れになってしまったらどうしよう。そんなことになったら悲しすぎて、死合いどころではなくなってしまう。

 ぐすん、と鼻をすすり上げ、アクセルは一度洗面所に行って顔を洗った。冷たい水でバシャバシャ洗ったら、少しだけ気分が落ち着いてきた。

 タオルで顔を拭いているところに、ようやく兄が帰って来た。
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