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第21章~トーナメント・第四死合い~
第13話
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居たたまれなくなってきて、声までしおしおと小さくなってきた。
――そうだよな……。自分が弱ってる時に逆に弱音吐かれたら、「こいつには頼れない」って思っちゃうよな……。
兄に頼ってもらえないのは、完全に自分のせいだということに改めて気づく。これでは兄も――例え大丈夫じゃなくても、「大丈夫だよ」と言わざるを得ないだろう。
それならせめて涙くらいは止めなきゃ……と思うのに、どうしても嗚咽が止まらない。自分の不甲斐なさが情けなくて、そんな自分も悔しくてたまらず、自然と涙が溢れてくる。
「……まあでも、そういう不完全なところが可愛いんだけどね」
と、兄が微笑み、優しくこちらを撫でてきた。
「小さなことで悩んじゃうところも、その悩みを素直に言えちゃうところも、勝手に落ち込んじゃうところも、子供みたいに泣いちゃうところも、全部可愛い。そういうところがあるから、お前はいつまで経ってもお前だなって安心もできるんだ」
「でも……俺、このままなのはさすがに情けなくて……」
「いいんだよ、お前はそのままで。ヴァルハラ暮らしが長いと、自然と人間らしい感情も薄れていっちゃうからさ。そうやって些細なことで悩んだり泣いたりできるのは、魂が瑞々しい証拠だ」
「……だけど……」
それでも納得できないでいると、兄は長い両腕でこちらを包み込んできた。甘くてほんのり野生っぽい香りに、胸が締め付けられるように痛む。切ない。
――そうだよな……。自分が弱ってる時に逆に弱音吐かれたら、「こいつには頼れない」って思っちゃうよな……。
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それならせめて涙くらいは止めなきゃ……と思うのに、どうしても嗚咽が止まらない。自分の不甲斐なさが情けなくて、そんな自分も悔しくてたまらず、自然と涙が溢れてくる。
「……まあでも、そういう不完全なところが可愛いんだけどね」
と、兄が微笑み、優しくこちらを撫でてきた。
「小さなことで悩んじゃうところも、その悩みを素直に言えちゃうところも、勝手に落ち込んじゃうところも、子供みたいに泣いちゃうところも、全部可愛い。そういうところがあるから、お前はいつまで経ってもお前だなって安心もできるんだ」
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「……だけど……」
それでも納得できないでいると、兄は長い両腕でこちらを包み込んできた。甘くてほんのり野生っぽい香りに、胸が締め付けられるように痛む。切ない。
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