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第20章~トーナメント・第三死合い~
第88話
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――死合い前っていつもこうなんだよな……。一度始まっちゃえば緊張も忘れるんだが。
何度か深呼吸をし、緊張を抑えようと努める。
時間になったので、スタジアム中央に進んだ。
観客席は当然のように満員で、ボックス席には兄の姿も見えた。ちゃんと応援しに来てくれてよかった。
反対側の入場口からチェイニーがやってくる。さすがに今は小型のボウガンらしき武器は所持しているみたいだった。それだけとも思えないが、一体どこに武器を隠しているのだろう……。
「やあアクセル、調子はどうよ?」
先程と同じことをチェイニーが聞いてくる。
「心臓ばくばくだし、汗もかいてるんじゃないの?」
「ああ、まあ……多少はな。でもこんなのみんな同じだろ? 死合い前は多少なりとも緊張するものだし」
「え……」
「俺はいつも通りだ。心配は無用だよ」
そう答えたら、何故かチェイニーは怪訝な顔になった。
こちらの全身を眺めてきて、呟くようにこんなことを言ってくる。
「……おかしいな。あまり効いてないのか?」
「はっ……?」
「いや、こっちの話。気にしないで」
そう言われても、死合い前にそんなこと言われたら気になってしまうのだが……。
『ただいまより、第一回トーナメント・グループD・第三戦二組・アクセルVSチェイニーを行います』
天からヴァルキリーの声が降ってくる。それと同時に観客席も静まり返った。
死合い前のわずかな静寂が、最も緊張が高まる瞬間である。
何度か深呼吸をし、緊張を抑えようと努める。
時間になったので、スタジアム中央に進んだ。
観客席は当然のように満員で、ボックス席には兄の姿も見えた。ちゃんと応援しに来てくれてよかった。
反対側の入場口からチェイニーがやってくる。さすがに今は小型のボウガンらしき武器は所持しているみたいだった。それだけとも思えないが、一体どこに武器を隠しているのだろう……。
「やあアクセル、調子はどうよ?」
先程と同じことをチェイニーが聞いてくる。
「心臓ばくばくだし、汗もかいてるんじゃないの?」
「ああ、まあ……多少はな。でもこんなのみんな同じだろ? 死合い前は多少なりとも緊張するものだし」
「え……」
「俺はいつも通りだ。心配は無用だよ」
そう答えたら、何故かチェイニーは怪訝な顔になった。
こちらの全身を眺めてきて、呟くようにこんなことを言ってくる。
「……おかしいな。あまり効いてないのか?」
「はっ……?」
「いや、こっちの話。気にしないで」
そう言われても、死合い前にそんなこと言われたら気になってしまうのだが……。
『ただいまより、第一回トーナメント・グループD・第三戦二組・アクセルVSチェイニーを行います』
天からヴァルキリーの声が降ってくる。それと同時に観客席も静まり返った。
死合い前のわずかな静寂が、最も緊張が高まる瞬間である。
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