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第20章~トーナメント・第三死合い~
第48話*
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「そう? 私はやってみたいな。こんなお前を見られるの、最初で最後かもしれないし」
「それは……」
「きっと明日にはいつものお前に戻ってると思う。だからその前に味わっておきたいんだ。私の知らない若かった頃のお前を」
「っ……」
そんな風に言われたら、こちらも断りづらい。
アクセル自身も――若返ってしまったのは不本意だけれど――生前に兄と抱き合えたらどんな気分だったか、体験してみたい気持ちはある。
明日には治ってしまうならなおのこと、これを体験できるのは今しかない。
それはわかっているのだが……。
「でもなんか、都合よく扱われてるみたいで嫌だ!」
アクセルはバタバタと脚をばたつかせた。
相変わらずほとんど抵抗にならなかったが、このまま抱かれるのは何だか納得いかなかった。行為そのものはいいとして、気持ちがそちらに向かない。
「そりゃあ生前みたいに交われたら新鮮だろうけど! これじゃ全部兄上の思い通りじゃないか! 俺に栄養ドリンク飲ませたのも、わざと若返らせてこういうことしたかったからじゃないのか!? 俺も今日行きたいところあったのに、兄上のせいで留守番する羽目になっちゃったんだよ! しかもあんな貞操帯まで着けさせられて! そこまでする必要なかったのに!」
「アクセル……」
「もう兄上に好き放題やられるのは嫌だ! 俺は兄上の欲望の捌け口じゃない! いつも適当な言い訳ばかりされるけど、もうごまかされないからな!」
ぐいぐい、と兄の肩を押し返したのだが、びくともせずに逆に片手で両腕をまとめて押さえつけられてしまう。
それで余計に怒りが湧いてきて、アクセルは闇雲にもがいた。
「それは……」
「きっと明日にはいつものお前に戻ってると思う。だからその前に味わっておきたいんだ。私の知らない若かった頃のお前を」
「っ……」
そんな風に言われたら、こちらも断りづらい。
アクセル自身も――若返ってしまったのは不本意だけれど――生前に兄と抱き合えたらどんな気分だったか、体験してみたい気持ちはある。
明日には治ってしまうならなおのこと、これを体験できるのは今しかない。
それはわかっているのだが……。
「でもなんか、都合よく扱われてるみたいで嫌だ!」
アクセルはバタバタと脚をばたつかせた。
相変わらずほとんど抵抗にならなかったが、このまま抱かれるのは何だか納得いかなかった。行為そのものはいいとして、気持ちがそちらに向かない。
「そりゃあ生前みたいに交われたら新鮮だろうけど! これじゃ全部兄上の思い通りじゃないか! 俺に栄養ドリンク飲ませたのも、わざと若返らせてこういうことしたかったからじゃないのか!? 俺も今日行きたいところあったのに、兄上のせいで留守番する羽目になっちゃったんだよ! しかもあんな貞操帯まで着けさせられて! そこまでする必要なかったのに!」
「アクセル……」
「もう兄上に好き放題やられるのは嫌だ! 俺は兄上の欲望の捌け口じゃない! いつも適当な言い訳ばかりされるけど、もうごまかされないからな!」
ぐいぐい、と兄の肩を押し返したのだが、びくともせずに逆に片手で両腕をまとめて押さえつけられてしまう。
それで余計に怒りが湧いてきて、アクセルは闇雲にもがいた。
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