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第16章~里帰り~
第31話
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ヴァルハラにいるということはつまり、もうこの世にはいないということだ。形はどうあれ、一度死んでいるということだ。
そんな大事なことを、母親が知らないのは違和感があるのだが……。
「ところで、今日は何しに来たんだい?」
「あ、ああ……ええと、アロイスのいう『おふくろの味』を勉強したくて」
「おふくろの味?」
「アロイス、お母さんがよく作ってくれた豆のスープが忘れられないみたいで。以前に作ってくれと頼まれたんですが、『これじゃない』と言われてしまい……。それで、直接勉強しにきたわけです」
「何だって? あの子ときたら……作ってくれた人に向かって『これじゃない』なんて暴言を吐いたのかい? とんでもない子だね」
再び息子へのダメ出しを口にするアニータ。
「すまないねぇ……そんなことのためにわざわざ。今日はもう夕飯用意しちゃったから、豆のスープは明日でいいかい?」
「ええ、もちろん。今から作るのは大変でしょうし」
「じゃあ明日作ってあげるよ。それをあの子に持っておいき。一緒にレシピも教えてあげるからね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
よかった。何とか教えてもらえそうだ。
――というかレシピ云々じゃなくて、最初からお母さんが作ったスープを持って帰ってやればよかったのか。
そんな大事なことを、母親が知らないのは違和感があるのだが……。
「ところで、今日は何しに来たんだい?」
「あ、ああ……ええと、アロイスのいう『おふくろの味』を勉強したくて」
「おふくろの味?」
「アロイス、お母さんがよく作ってくれた豆のスープが忘れられないみたいで。以前に作ってくれと頼まれたんですが、『これじゃない』と言われてしまい……。それで、直接勉強しにきたわけです」
「何だって? あの子ときたら……作ってくれた人に向かって『これじゃない』なんて暴言を吐いたのかい? とんでもない子だね」
再び息子へのダメ出しを口にするアニータ。
「すまないねぇ……そんなことのためにわざわざ。今日はもう夕飯用意しちゃったから、豆のスープは明日でいいかい?」
「ええ、もちろん。今から作るのは大変でしょうし」
「じゃあ明日作ってあげるよ。それをあの子に持っておいき。一緒にレシピも教えてあげるからね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
よかった。何とか教えてもらえそうだ。
――というかレシピ云々じゃなくて、最初からお母さんが作ったスープを持って帰ってやればよかったのか。
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