1,765 / 2,778
第16章~里帰り~
第27話
しおりを挟む
「夜になると、森に化け物が出るんだ! ドズルバーとかいう、怖い化け物なんだ!」
「ド……?」
「そいつは人間の姿にも化けられて、森に迷い込んだ子供を食っちまうんだ! そいつと出会ったヤツは、生きて帰れないって言われてるんだよ!」
「へ、へぇ……」
話を聞きながら、アクセルは曖昧に相槌を打った。
――それ、子供が夜の森に出掛けないようにするための教育的嘘なんじゃ……?
大人になった今ならわかる。子供というのは己の力量度外視で、やれ「肝試し」だの「化け物退治」だのという名目を掲げて、無謀な行動を取りがちだ。自分も子供の頃は、「兄を迎えに行きたいから」と勝手に家を出て戦場に行こうとしたことがたくさんある(今思えば迷惑極まりない)。
そういう子供を抑止するために、存在しない化け物を作り上げて行動を制限しようとするのだろう。
「これ、おやめ。お前は引っ込んでなさい」
母親がやってきて、子供を横に押し退ける。
なるほど、この人がアニータさんか。身長はさほど高くないけれど、何となく大きいなという印象を受ける。恰幅がいいのもあるし、母親特有の迫力というか……そういうものも相まって、単純な戦闘力では測れない強さを感じる。
一方で、顔の造形は何となくアロイスに似ていて、目元や鼻の形なんかはアロイスそっくりだった。万が一人違いだったら困るなと思ったが、見た目からしてもこの人がアロイスの母親で間違いなさそうだ。
「ド……?」
「そいつは人間の姿にも化けられて、森に迷い込んだ子供を食っちまうんだ! そいつと出会ったヤツは、生きて帰れないって言われてるんだよ!」
「へ、へぇ……」
話を聞きながら、アクセルは曖昧に相槌を打った。
――それ、子供が夜の森に出掛けないようにするための教育的嘘なんじゃ……?
大人になった今ならわかる。子供というのは己の力量度外視で、やれ「肝試し」だの「化け物退治」だのという名目を掲げて、無謀な行動を取りがちだ。自分も子供の頃は、「兄を迎えに行きたいから」と勝手に家を出て戦場に行こうとしたことがたくさんある(今思えば迷惑極まりない)。
そういう子供を抑止するために、存在しない化け物を作り上げて行動を制限しようとするのだろう。
「これ、おやめ。お前は引っ込んでなさい」
母親がやってきて、子供を横に押し退ける。
なるほど、この人がアニータさんか。身長はさほど高くないけれど、何となく大きいなという印象を受ける。恰幅がいいのもあるし、母親特有の迫力というか……そういうものも相まって、単純な戦闘力では測れない強さを感じる。
一方で、顔の造形は何となくアロイスに似ていて、目元や鼻の形なんかはアロイスそっくりだった。万が一人違いだったら困るなと思ったが、見た目からしてもこの人がアロイスの母親で間違いなさそうだ。
1
お気に入りに追加
845
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。


ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。


新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる