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第12章~不穏な空気~
第132話
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「そんなに腹が減ってるなら、宴会場にでも行ってイノシシのシチューを前菜に食べてきたらどうだ?」
冗談のつもりでそう言ったら、兄は真顔になってポンと手を打った。
「あ、なるほど。その手があったか。じゃあ今からパパッと行ってくるね」
「……え?」
「すぐ戻って来るから、ちょっと待ってて」
止める間もなく、兄はつむじ風のように家を飛び出して行ってしまった。
「……マジかよ、ったく……」
一人残されたアクセルは、腰に手を当てて呆れ返った。まさか本当に飛び出して行くとは思わなかった。
――もうすぐ食事なのに……どんだけ食い意地が張ってるんだか。
あと数分を我慢できないのか。そんなに空腹だったのか。兄の食欲はアクセルには理解できない。
仕方ないので、煮込んだシチューと一緒にパンを食べることにした。
どうせ兄は宴会場で食事してくるからいらないだろうと自分の分だけ食事をテーブルに並べていたら、宣言通り兄はすぐに帰ってきた。
「ただいまー! 前菜食べてきたよ! ご飯にしよう!」
「……えっ? 食べるのか? 宴会場で食事してきたんじゃないのか?」
「したよ。でもあれはあくまで前菜。メインディッシュじゃないからね」
「ええー……?」
「イノシシのシチューも美味しいけど、やっぱり私はお前が作ってくれたご飯が一番好きだな。なんか幸せな味がするの」
「…………」
「お前は先に座ってて。私は自分の好きな量盛ってくるよ」
冗談のつもりでそう言ったら、兄は真顔になってポンと手を打った。
「あ、なるほど。その手があったか。じゃあ今からパパッと行ってくるね」
「……え?」
「すぐ戻って来るから、ちょっと待ってて」
止める間もなく、兄はつむじ風のように家を飛び出して行ってしまった。
「……マジかよ、ったく……」
一人残されたアクセルは、腰に手を当てて呆れ返った。まさか本当に飛び出して行くとは思わなかった。
――もうすぐ食事なのに……どんだけ食い意地が張ってるんだか。
あと数分を我慢できないのか。そんなに空腹だったのか。兄の食欲はアクセルには理解できない。
仕方ないので、煮込んだシチューと一緒にパンを食べることにした。
どうせ兄は宴会場で食事してくるからいらないだろうと自分の分だけ食事をテーブルに並べていたら、宣言通り兄はすぐに帰ってきた。
「ただいまー! 前菜食べてきたよ! ご飯にしよう!」
「……えっ? 食べるのか? 宴会場で食事してきたんじゃないのか?」
「したよ。でもあれはあくまで前菜。メインディッシュじゃないからね」
「ええー……?」
「イノシシのシチューも美味しいけど、やっぱり私はお前が作ってくれたご飯が一番好きだな。なんか幸せな味がするの」
「…………」
「お前は先に座ってて。私は自分の好きな量盛ってくるよ」
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