1,336 / 2,783
第12章~不穏な空気~
第131話
しおりを挟む
かつては手のひらに乗っかるほど小さくて、オオカミが現れると脅えて隠れてしまうようなうさぎだったのに。それが自ら狩りの手伝いを名乗り出るとか、随分たくましくなったものだ。身体が大きくなったのもあるだろうが、番犬並みの頼もしさがある。
微笑みつつ、アクセルは隣を歩いているピピを撫でた。
「ありがとう、ピピ。じゃあ今度狩りに行く時はついてきてくれ。頼りにしてるよ」
「ぴー♪」
「さて、いつ行こうかな……。なるべく早い方がいいけど……明日はダメだし、明後日は……。そういや、次の死合いっていつだったっけ……」
一人でブツブツ言いながら、庭を歩き回る。
そうしてウォーキングを続けていたら陽がだんだん傾いてきたので、家に戻って夕食の準備をした。兄の好きなステーキ用の肉を切らしていたので、干し肉を切り刻んでシチューにした。本当に、よく食べる人が家にいると食料がすぐなくなる。
「ねえ、これ味見しちゃダメかな」
兄が豆のスープが入った鍋を覗き込み、チラチラとこちらに視線を送ってきた。もうすぐ食事も出来上がるんだから、それまでおとなしく待っていて欲しい。
さすがに呆れてしまい、アクセルは溜息混じりに答えた。
「……それはアロイスに届けるスープだぞ。ダメに決まってるだろ」
「でも、味見をして確かめておいた方がいいじゃない?」
「兄上は『味見』と称してがっつり食べちゃうからダメだ。それに、味見はもう俺がしておいたから問題ない」
「えー……?」
微笑みつつ、アクセルは隣を歩いているピピを撫でた。
「ありがとう、ピピ。じゃあ今度狩りに行く時はついてきてくれ。頼りにしてるよ」
「ぴー♪」
「さて、いつ行こうかな……。なるべく早い方がいいけど……明日はダメだし、明後日は……。そういや、次の死合いっていつだったっけ……」
一人でブツブツ言いながら、庭を歩き回る。
そうしてウォーキングを続けていたら陽がだんだん傾いてきたので、家に戻って夕食の準備をした。兄の好きなステーキ用の肉を切らしていたので、干し肉を切り刻んでシチューにした。本当に、よく食べる人が家にいると食料がすぐなくなる。
「ねえ、これ味見しちゃダメかな」
兄が豆のスープが入った鍋を覗き込み、チラチラとこちらに視線を送ってきた。もうすぐ食事も出来上がるんだから、それまでおとなしく待っていて欲しい。
さすがに呆れてしまい、アクセルは溜息混じりに答えた。
「……それはアロイスに届けるスープだぞ。ダメに決まってるだろ」
「でも、味見をして確かめておいた方がいいじゃない?」
「兄上は『味見』と称してがっつり食べちゃうからダメだ。それに、味見はもう俺がしておいたから問題ない」
「えー……?」
0
お気に入りに追加
844
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。


巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる