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第11章~強くなるために~
第140話
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シュッ、シュッ、と拳を繰り出してみたが、なかなか兄には当たらない。一発殴るだけなんだから、いちいち避けないで早く殴られてくれないだろうか。時間がかかってしょうがない。
こんなことなら不意打ちを狙った方がよかったかな……などと思いつつ、アクセルは横から拳を振り抜いた。
案の定、それも避けられてしまったが、兄の足元にちょうど大きめの石が転がっていて、
「わっ!」
それに引っ掛かり、兄がバランスを崩した。
その隙を狙い、アクセルは左拳を兄の頬に叩き込んだ。
「っ……!」
バキッという音がして、確実な手応えを感じた。
兄はよろよろと後退し、赤くなった右頬を押さえた。
「……で、気は済んだ?」
「ああ、もう大丈夫だ」
「……そうかい。ならよかったよ」
完全に呆れつつ、深々と溜息をつく。
いまいち納得できていなさそうな顔だったけど、こちらの気は済んだので浮気のことは水に流すことにしよう。
アクセルは気持ちを切り替えつつ、兄に言った。
「じゃあ、俺はバルドル様に挨拶してくる。さっきはちょっとしか話せなかったからな」
「……それはお前が突然キレ出すからじゃないの?」
「元はと言えば、兄上が浮気するのがいけないんだ。ちなみに、これからは兄上が浮気する度に一発殴ることにしたから、そのつもりでいてくれ」
「ええー……? 浮気もしてないのに殴られるとか、そんな理不尽なことある?」
こんなことなら不意打ちを狙った方がよかったかな……などと思いつつ、アクセルは横から拳を振り抜いた。
案の定、それも避けられてしまったが、兄の足元にちょうど大きめの石が転がっていて、
「わっ!」
それに引っ掛かり、兄がバランスを崩した。
その隙を狙い、アクセルは左拳を兄の頬に叩き込んだ。
「っ……!」
バキッという音がして、確実な手応えを感じた。
兄はよろよろと後退し、赤くなった右頬を押さえた。
「……で、気は済んだ?」
「ああ、もう大丈夫だ」
「……そうかい。ならよかったよ」
完全に呆れつつ、深々と溜息をつく。
いまいち納得できていなさそうな顔だったけど、こちらの気は済んだので浮気のことは水に流すことにしよう。
アクセルは気持ちを切り替えつつ、兄に言った。
「じゃあ、俺はバルドル様に挨拶してくる。さっきはちょっとしか話せなかったからな」
「……それはお前が突然キレ出すからじゃないの?」
「元はと言えば、兄上が浮気するのがいけないんだ。ちなみに、これからは兄上が浮気する度に一発殴ることにしたから、そのつもりでいてくれ」
「ええー……? 浮気もしてないのに殴られるとか、そんな理不尽なことある?」
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