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第11章~強くなるために~

第8話

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「うむ。普通の者はこの水に馴れるだけで丸一日はかかる。最初から三〇分間も耐えられるなどと思うな。力は一朝一夕には身に付かぬものだ」
「は、はい……」

 そうなのか。この滝修行はそんなに難しいものだったのか。まあ確かに、普通の滝修行とは比べ物にならないくらい大変だったけど。

「でもケイジ様は、毎日こういった訓練を当たり前のようにこなしているんですよね」

 と、アクセルは感嘆の息を吐いた。

「滝に打たれる時の心得とか、何かあるんですか?」
「心得とは?」
「この水、凍りそうなほど冷たいでしょう? 上から落ちてくると石みたいに重くなるし、ちょっとでも気を抜いたら死にそうだし。でもケイジ様は平気な顔して打たれていらっしゃったので、心構えからして俺とは違うんじゃないかと……」
「…………」

 するとケイジは、腕組みをしてこちらを見下ろしてきた。殺気はないのだが、上位ランカー特有の迫力に圧倒されそうだった。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」
「えっ……?」
「集中力を極限まで高めれば、水の冷たさなど感じなくなるものだ。水が冷たいなどと思うのは、集中が足りない証拠である」
「そ、そうですか……」
「あとは強靭な足腰だな。足腰さえしっかりしていれば、どんなに重いものが上から落ちて来ても負けることはない。何時間でも滝に打たれていられる」
「はあ……」

 つまり自分が滝修行で気絶したのは、集中力と足腰がなかったということだ。その二つが十分に備わっていなければ、滝修行はクリアできないということだ。
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