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第10章~日常の中で~
第30話
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――やっぱり俺は、この人の弟なんだな……。
記憶はハッキリしない。具体的なエピソードも思い出せない。
だけど、こうして抱き締められた記憶は身体に刻み込まれている。懐かしさと共に、得も言われぬ安堵感が全身を満たしていく。
「フレインさん」
アクセルは抱き締められたまま、思い切って言った。
「今日からまた『兄上』って呼んでいいですか?」
「えっ? お前、私がお兄ちゃんだって思い出したの?」
驚いてフレインが顔を覗き込んできたので、慌てて苦笑いする。
「あ、すみません……具体的なことはまだ。でも、あなたが俺の兄なのはわかります。頭は忘れても、身体はちゃんと覚えているんです」
「身体が……」
「今日久々に死合いをしてみてわかりました。以前の経験は、確実に俺の身体に刻み込まれている。はっきりしたエピソードは覚えていなくても、その時学習したことは全部身体が覚えてくれているんです。だから、フレインさん……いえ、兄上がこうしてよく抱き締めてくれたことも覚えています」
「…………」
「このまま死合いを続けていれば、全部の記憶を取り戻せる。そんな気がするんです。死合いを行う度に昔の感覚が蘇っていくことが、俺には本当に嬉しくて」
「それはよかった」
フレインは少し身体を離すと、こちらの頭を優しく撫でてきた。これも以前、よくやられていたなと思う。事あるごとに「いい子いい子」と褒められていたような気がする。
「じゃあ、これからも死合い頑張ろうね。ついでにランクも上げていこう。私は、お前と公式に死合えるのをいつまでも楽しみに待ってるよ」
「はい、頑張ります」
記憶はハッキリしない。具体的なエピソードも思い出せない。
だけど、こうして抱き締められた記憶は身体に刻み込まれている。懐かしさと共に、得も言われぬ安堵感が全身を満たしていく。
「フレインさん」
アクセルは抱き締められたまま、思い切って言った。
「今日からまた『兄上』って呼んでいいですか?」
「えっ? お前、私がお兄ちゃんだって思い出したの?」
驚いてフレインが顔を覗き込んできたので、慌てて苦笑いする。
「あ、すみません……具体的なことはまだ。でも、あなたが俺の兄なのはわかります。頭は忘れても、身体はちゃんと覚えているんです」
「身体が……」
「今日久々に死合いをしてみてわかりました。以前の経験は、確実に俺の身体に刻み込まれている。はっきりしたエピソードは覚えていなくても、その時学習したことは全部身体が覚えてくれているんです。だから、フレインさん……いえ、兄上がこうしてよく抱き締めてくれたことも覚えています」
「…………」
「このまま死合いを続けていれば、全部の記憶を取り戻せる。そんな気がするんです。死合いを行う度に昔の感覚が蘇っていくことが、俺には本当に嬉しくて」
「それはよかった」
フレインは少し身体を離すと、こちらの頭を優しく撫でてきた。これも以前、よくやられていたなと思う。事あるごとに「いい子いい子」と褒められていたような気がする。
「じゃあ、これからも死合い頑張ろうね。ついでにランクも上げていこう。私は、お前と公式に死合えるのをいつまでも楽しみに待ってるよ」
「はい、頑張ります」
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