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第9章~再会と記憶~
第36話(フレイン視点)
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アクセルの欠片を手に入れたのだから、一刻も早くオーディンのところに持って行きたかったのに。せっかく狂戦士になったのに、全身に力が入らない……。
「ぴー!」
ピピが鳴きながらこちらに駆け寄ってきた。
おうちで留守番しているかと思いきや、世界樹まで迎えに来てくれたようだ。アクセル同様、よくできた神獣だ。
「ピピちゃん……大丈夫だよ……ちょっと休めば元気になる……ごほっ!」
喋ったら急に咳き込んでしまい、フレインは手で口元を押さえた。喉元にどろりとしたものがせり上がってきて、舌の上に鉄っぽい味を感じた。掌が見馴れた血液で濡れたのを見て、さすがに少し焦った。
――いや、ちょっと……こんなところで死んでる場合じゃないんだけど……。
棺に入れば全快するけれど、そんなことをしていたら大幅なタイムロスになる。アクセルは今も復活するのを待っているのだ。これ以上時間をかけることはできない。
せめてオーディンに欠片を届けるまで……それまでは、何とか頑張らなければ……。
「おい、どうしたんだ?」
ぜいぜいと荒っぽい呼吸を繰り返していたら、聞き慣れた声が耳に入ってきた。歩き方からしてジークだということがわかった。
彼はフレインを抱き起こしつつ、呆れた顔で言った。
「ぴー!」
ピピが鳴きながらこちらに駆け寄ってきた。
おうちで留守番しているかと思いきや、世界樹まで迎えに来てくれたようだ。アクセル同様、よくできた神獣だ。
「ピピちゃん……大丈夫だよ……ちょっと休めば元気になる……ごほっ!」
喋ったら急に咳き込んでしまい、フレインは手で口元を押さえた。喉元にどろりとしたものがせり上がってきて、舌の上に鉄っぽい味を感じた。掌が見馴れた血液で濡れたのを見て、さすがに少し焦った。
――いや、ちょっと……こんなところで死んでる場合じゃないんだけど……。
棺に入れば全快するけれど、そんなことをしていたら大幅なタイムロスになる。アクセルは今も復活するのを待っているのだ。これ以上時間をかけることはできない。
せめてオーディンに欠片を届けるまで……それまでは、何とか頑張らなければ……。
「おい、どうしたんだ?」
ぜいぜいと荒っぽい呼吸を繰り返していたら、聞き慣れた声が耳に入ってきた。歩き方からしてジークだということがわかった。
彼はフレインを抱き起こしつつ、呆れた顔で言った。
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