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第7章~ラグナロクの最中に~

第34話

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 そう言ったら、ようやくピピは暴れるのをやめた。じっとこちらを見つめ、何かを訴えるようなまなざしを向けてくる。

 アクセルは乱れた髪を直しつつ、ピピを見返した。

「……もしかして、一緒に戦いたいのか?」
「ぴー」
「いや、でも……相手は神だぞ? 巨人もたくさんいるし、化け物みたいなヤツもいっぱい出てくるんだぞ? それでもいいのか?」

 うんうん、と頷いてくるピピ。そして舌足らずな言葉でこう告げてきた。

「アクセル、すき。ピピ、いっしょ。ピピ、たたかう」
「ピピ……」
「アクセル、いきる。ピピも、いきる。みんな、いきる」
「……そうだな。みんなで生き延びなければ意味がないんだ」

 誰がどんな思惑を秘めていても、自分たちはラグナロクを無事に生き延びねばならない。せっかくヴァルハラに来たのに、神と巨人の戦に巻き込まれて死ぬなんてまっぴらだ。

 アクセルは微笑みながら、ピピを撫でた。そして冗談めかして言った。

「じゃあいざという時は、速い脚を貸してくれ。神や巨人から逃げられるようにな」
「ぴー!」

 任せとけ、とピピが胸を張ってくる。ピピの背中なら自分と兄が乗っても余裕だし、万が一の時は頼りになるかもしれない。

 もっとも、万が一のことなんて起こらないのが一番なんだが……と思いつつ、アクセルはボーッと空を見上げた。無数の星が墨色の空で瞬いていた。

 ――あの星たちは、いなくなった人たちの魂だって聞いた事があるが……。

 平和な時はさほど気にしないが、戦時中は時々そんなことを考えてしまう。自分たちは滅ぼされたらどこに行くんだろう……と。
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