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第6章~ラグナロクの始まり~
第145話
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「アクセル、ご飯とりに行こうよ。ピピちゃんにも持って行ってあげないと。お腹空かして待ってるよ」
「う、うん……そうだな」
後ろ髪を引かれる気分だったが、兄に促されてアクセルは厨房に食事をとりに行った。
厨房は食堂のすぐ隣にあり、自由に食事できるようになっていた。網の上にはシンプルなパンが並んでいて、鍋の中にはイノシシのシチューが残っている。必要なら、自分で好きなものを調理して食べていいそうだ。ただし食料の備蓄にも限度があるから、あまり無駄遣いはしないように、と言われた。
「ピピちゃんは一体何を食べるんだろうねぇ? お肉かな」
「……だから、肉を食べたいのは兄上だろ」
と呆れつつ、雑食かもしれないので一応自分と同じ食事を用意してみる。
深めの皿にシチューをよそい、大きめに切ったパンをそこに浸した。シチューには肉も野菜も含まれているから、何が好きなのか選別しやすい。
――早く戻らないと……。
アクセルはトレーに皿を乗せ、兄に言った。
「じゃあ俺、ピピと食事してくるよ。兄上はどうする?」
「んー……私は遠慮しとこうかな。ピピちゃん、お前と話したそうだったから」
「……そうか。じゃあ行ってくる」
兄に見送られ、再び長い階段を上る。
来たときよりも多少短く感じたが、疲れた時に上るとこの道のりがやたらと億劫に思えた。
ここでしばらく生活することになるなら、やはり早いところショートカット用の道を作っておきたい。
「う、うん……そうだな」
後ろ髪を引かれる気分だったが、兄に促されてアクセルは厨房に食事をとりに行った。
厨房は食堂のすぐ隣にあり、自由に食事できるようになっていた。網の上にはシンプルなパンが並んでいて、鍋の中にはイノシシのシチューが残っている。必要なら、自分で好きなものを調理して食べていいそうだ。ただし食料の備蓄にも限度があるから、あまり無駄遣いはしないように、と言われた。
「ピピちゃんは一体何を食べるんだろうねぇ? お肉かな」
「……だから、肉を食べたいのは兄上だろ」
と呆れつつ、雑食かもしれないので一応自分と同じ食事を用意してみる。
深めの皿にシチューをよそい、大きめに切ったパンをそこに浸した。シチューには肉も野菜も含まれているから、何が好きなのか選別しやすい。
――早く戻らないと……。
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「じゃあ俺、ピピと食事してくるよ。兄上はどうする?」
「んー……私は遠慮しとこうかな。ピピちゃん、お前と話したそうだったから」
「……そうか。じゃあ行ってくる」
兄に見送られ、再び長い階段を上る。
来たときよりも多少短く感じたが、疲れた時に上るとこの道のりがやたらと億劫に思えた。
ここでしばらく生活することになるなら、やはり早いところショートカット用の道を作っておきたい。
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