転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています~ヴァルハラで死合いましょう~

夢咲まゆ

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第6章~ラグナロクの始まり~

第138話

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「ぴー!」

 その時、タイミングよくピピの鳴き声が聞こえた。

 アクセルは慌てて兄から離れ、泉に潜って全身の汚れを落とした。汗や体液でどろどろだった身体が一気にさっぱりする。

 水面に向かって上昇し、泉から顔を出したら、ちょうどピピが帰ってきた。

 アクセルは水辺に上がり、鼻面を寄せてきたピピを撫でた。

「おかえり、ピピ。待たせてすまなかったな」
「ぴー」
「これから俺たちは地下で食事をするんだが、ピピはどうする? 何かご飯は食べたのか?」

 ふるふると首を横に振るピピ。途端、ぐぅぅ……という腹の虫が聞こえてきた。自分のではなく、ピピのものだった。ピピもそれなりにお腹が空いているようだ。

「きみは普段何を食べているんだ? ニンジンか?」
「ぴ?」
「うさぎだからニンジンが好きっていうのは、安易な発想だよねぇ? うさぎでも時にはお肉食べたくなることあるでしょ?」

 と、兄がピピに話しかける。

 ――いや、兄上が肉を食べたいだけだろ……。

 やや呆れながら兄を見たら、「それはさておき」と兄が話を変えてきた。

「地下への入口、ピピちゃんにはちょっと小さすぎると思うんだ。ご飯は持ってきてあげられるけど、一緒に地下に入ることはできないんじゃないかな」
「え……そうなのか?」
「うん。それに地下そのものもあまり広くないからね。ピピちゃんが生活する場所はないと思うよ」
「そうか……」

 言われてみれば当然か。

 地下の施設は、緊急避難場所のようなものである。そんなところに個人的な動物をつれて行くことはできない。ましてやこんな大きな生き物を。
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