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第6章~ラグナロクの始まり~
第102話
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「兄上、待ってくれ!」
「ええ? 急げって言ったり待ってと言ったり、気まぐれな子だね? 今度は何だい?」
「いや、ちょっと……」
アクセルは足を止め、そっと茂みまで近づいた。そして小さく声をかけた。
「……ピピ? ピピなのか?」
「ぴー」
一声返事があったかと思ったら、茂みからガサッとうさぎの顔が飛び出してきた。やたらと耳が長く、身体も通常のカンガルーの三倍以上ある。ヴァルハラの図書館で調べた神獣と同じ姿だった。
その神獣が、暗がりの中でこちらをじっと見つめてくる。
「ピピ……本当にきみか……?」
「ぴー」
「よかった……! きみ、無事だったんだな。というか、随分大きくなったな……」
「アクセル、すき」
「ありがとう、俺も大好きだよ」
言葉もちゃんと覚えていたようで安心した。全体像はよく見えないけれど、これは間違いなくピピだ。
思いもよらない味方に遭遇し、アクセルはホッと手を伸ばそうとした。
だが……。
「うっ……!」
全身に激痛が走り、その場に崩れ落ちてしまった。肌がジリジリ焼け、身体の先端から徐々に溶けていくのが嫌でもわかる。
――くそ、一瞬気が緩んだか……!
もう一度狂戦士になろうとしたけれど、集中力を高めるどころか激痛で呼吸すら満足にできなくなる。これ以上歩けそうにないし、起き上がることもままならない。
「ええ? 急げって言ったり待ってと言ったり、気まぐれな子だね? 今度は何だい?」
「いや、ちょっと……」
アクセルは足を止め、そっと茂みまで近づいた。そして小さく声をかけた。
「……ピピ? ピピなのか?」
「ぴー」
一声返事があったかと思ったら、茂みからガサッとうさぎの顔が飛び出してきた。やたらと耳が長く、身体も通常のカンガルーの三倍以上ある。ヴァルハラの図書館で調べた神獣と同じ姿だった。
その神獣が、暗がりの中でこちらをじっと見つめてくる。
「ピピ……本当にきみか……?」
「ぴー」
「よかった……! きみ、無事だったんだな。というか、随分大きくなったな……」
「アクセル、すき」
「ありがとう、俺も大好きだよ」
言葉もちゃんと覚えていたようで安心した。全体像はよく見えないけれど、これは間違いなくピピだ。
思いもよらない味方に遭遇し、アクセルはホッと手を伸ばそうとした。
だが……。
「うっ……!」
全身に激痛が走り、その場に崩れ落ちてしまった。肌がジリジリ焼け、身体の先端から徐々に溶けていくのが嫌でもわかる。
――くそ、一瞬気が緩んだか……!
もう一度狂戦士になろうとしたけれど、集中力を高めるどころか激痛で呼吸すら満足にできなくなる。これ以上歩けそうにないし、起き上がることもままならない。
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