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第6章~ラグナロクの始まり~

第78話

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 ロシェは、「ラグナロクが起こったら、オーディンはフェンリルに飲み込まれて死ぬ」と予言されていると教えてくれた。

 ではもしその予言が的中して、オーディンが本当に死んでしまったら、自分たちは一体どうなるのだろう。

 エインヘリヤルはその名の通り、オーディンの眷属である。その大元がいなくなってしまったら、自分たちも一緒に滅んでしまうのではないか。自分たちの存在意義もなくなってしまうのではないか。

 オーディンにはまだ一度も会ったことがないが、自分たちだけがラグナロクを乗り越えられても、オーディンが滅んでしまったら生き延びることはできないのではないか……?

「火、点けられた?」

 一人で悶々としていたら、兄が川から上がってきた。綺麗に鍛え上げられた肉体が、清流でしっとり濡れている。思わずドキッとした。

「あ、あー……ええと、すまない。もう少しかかりそうなんだ」
「そっか。まあ、今は着火材がないからねぇ。着替えたら私も手伝うよ」
「ああ、ありがとう……」

 すっ……と兄から目を反らし、火打ちを再開する。

 火花は多少散っているものの、枯れ葉の上に落ちる前に燃え尽きてしまい、運よく枯れ葉に落ちても完全に火が点く前に消えてしまう。

 もっと火付きのよさそうな枯れ草でも探して来ようか、それとも木の棒をひたすら擦る方法に切り替えた方がいいだろうか。
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