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第6章~ラグナロクの始まり~

第76話

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「おーい、アクセル」

 兄に呼びかけられ、アクセルはそちらを振り返った。兄は川の中で左手を大きく振っていた。

 何かと思い、川岸まで行ってみると、

「はい、ご飯ゲットしたよ」
「……!」

 いきなり太刀の切っ先をこちらに向けられ、反射的に半歩後ろに下がった。見れば、鯉のような魚が串刺しになっている。遊泳していたかと思えば、魚を見つけて捕獲するとは……この兄は相変わらず行動が読めない。

 アクセルは刺さった魚を抜き取り、聞いた。

「……これをご飯にするのか?」
「そうだよ。お前、これ料理しといて」
「料理って……この状況じゃ、焼くことしかできないんだが」
「いいんじゃない、それで? 私だってそんな、レストランで出てくるようなフルコースは求めてないよ」
「……求められても出せないけどな」
「他にも美味しそうな食材見つけたら捕まえてくるねー。それじゃ」

 そう言い置き、兄は再び水の中に入っていった。

 ――美味しそうな食材……ねぇ?

 こういう普通の魚ならいいが、カニとかタコとか……イソギンチャクとかを捕まえて来られたらどうしよう。食材をゲットしてくれるのはありがたいけれど、最低限焼くだけで済む食材にして欲しい。下味をつけることはできないし。

 ――とりあえず、火起こしの準備でもするか……。

 アクセルはすぐ近くの茂みで落ち葉や枯れ枝を拾ってきて、手頃な小石も集めた。そして小石を丸く並べてサークルを作り、火起こしのスペースを作った。邪魔になりそうな石やゴミを取り除き、サークル内に落ち葉と枯れ枝を積んでいく。
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