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第6章~ラグナロクの始まり~
第63話
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「兄上がいきなり『バルドル様と同じようなことが起こるかも』って言い出したんだろう」
「そうだよ。でもそれってそんなに悩ましいこと?」
「はっ……?」
「お前は私が大好きだし、私もお前のことが好きだ。それでも時には喧嘩することもあるし、イラッとすることもある。さっきも言ったけど、それが普通じゃない?」
「それは……」
「もし一切喧嘩しない兄弟がいたとしたら、それは仲がいいんじゃなくてお互い無関心なだけだよ。無関心だから会話することもないし、会話しなければそもそも喧嘩にすらならないからね」
「…………」
「いろいろ思うところはあるけど、『ある一瞬の感情』だけを切り取って、それをその人全体の感情みたいに錯覚するのは間違いだ。何かの拍子に一瞬だけ殺意が芽生えることはあっても、総合的には『この人がいなくなったら嫌だ』って思う。それが当たり前でしょう」
兄は肩越しにこちらを振り向き、にこりと微笑んだ。
「だからもう、ごちゃごちゃ悩むのはやめなさい。お前は真面目だから、ひとつのことを突き詰めて考えすぎなんだ。私みたいに、もっとおおらかに生きた方がいいよ」
「……兄上は逆に、何事にもドライすぎるんじゃないか?」
「それ、よく言われるなぁ。弟と足して二で割ったらちょうどいいのに、って。面白いくらい凸凹だよね、私たち」
「……そうだな」
アクセルも小さく笑みを返した。
「そうだよ。でもそれってそんなに悩ましいこと?」
「はっ……?」
「お前は私が大好きだし、私もお前のことが好きだ。それでも時には喧嘩することもあるし、イラッとすることもある。さっきも言ったけど、それが普通じゃない?」
「それは……」
「もし一切喧嘩しない兄弟がいたとしたら、それは仲がいいんじゃなくてお互い無関心なだけだよ。無関心だから会話することもないし、会話しなければそもそも喧嘩にすらならないからね」
「…………」
「いろいろ思うところはあるけど、『ある一瞬の感情』だけを切り取って、それをその人全体の感情みたいに錯覚するのは間違いだ。何かの拍子に一瞬だけ殺意が芽生えることはあっても、総合的には『この人がいなくなったら嫌だ』って思う。それが当たり前でしょう」
兄は肩越しにこちらを振り向き、にこりと微笑んだ。
「だからもう、ごちゃごちゃ悩むのはやめなさい。お前は真面目だから、ひとつのことを突き詰めて考えすぎなんだ。私みたいに、もっとおおらかに生きた方がいいよ」
「……兄上は逆に、何事にもドライすぎるんじゃないか?」
「それ、よく言われるなぁ。弟と足して二で割ったらちょうどいいのに、って。面白いくらい凸凹だよね、私たち」
「……そうだな」
アクセルも小さく笑みを返した。
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