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第6章~ラグナロクの始まり~
第9話
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何故ヴァルハラは、そういう大事な書物を無造作に図書館に置いているのだろう。もっとこう……例えば世界樹の前にでも教科書代わりに並べておけば、皆手に取って読むと思うのだが。
――公式の教科書として配布されていれば、俺だって絶対目を通したのに……。
自分の住んでいる世界について、何も知らずに生活するのは意外と恐ろしい。いざという時にどうしていいかわからない。
今まではヴァルハラの中だけで暮らしていたけど、今回のようにいろいろな世界に飛ばされた場合、何も知らないと無力だなと思う。
こんなことになるなら、鍛錬の合間を縫ってでも、ちゃんと本に目を通しておくんだった……。
「それにしても、ここ同じような木ばかり並んでて道がわかりづらいね。こっちで合ってたかな?」
そう言って、兄が灰色の木の幹に耳を当てる。一体何をしているのだろう。
「……兄上?」
「死者の国ではね、出口に近づけば近づくほど、生きている木が増える。だからこうして、時々耳を当てて生きてるかどうか確認しなきゃならないんだ」
「耳を当てるだけで、生きてるかわかるのか?」
「それが、私にはよくわからないんだよね……。ねえ、お前は聞こえる? もしこの木が生きていれば、微かに水を通している音が聞こえるんだけど」
「どうかな……」
誘われるまま、アクセルも兄の真似をして木の幹に耳を当てた。
――公式の教科書として配布されていれば、俺だって絶対目を通したのに……。
自分の住んでいる世界について、何も知らずに生活するのは意外と恐ろしい。いざという時にどうしていいかわからない。
今まではヴァルハラの中だけで暮らしていたけど、今回のようにいろいろな世界に飛ばされた場合、何も知らないと無力だなと思う。
こんなことになるなら、鍛錬の合間を縫ってでも、ちゃんと本に目を通しておくんだった……。
「それにしても、ここ同じような木ばかり並んでて道がわかりづらいね。こっちで合ってたかな?」
そう言って、兄が灰色の木の幹に耳を当てる。一体何をしているのだろう。
「……兄上?」
「死者の国ではね、出口に近づけば近づくほど、生きている木が増える。だからこうして、時々耳を当てて生きてるかどうか確認しなきゃならないんだ」
「耳を当てるだけで、生きてるかわかるのか?」
「それが、私にはよくわからないんだよね……。ねえ、お前は聞こえる? もしこの木が生きていれば、微かに水を通している音が聞こえるんだけど」
「どうかな……」
誘われるまま、アクセルも兄の真似をして木の幹に耳を当てた。
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