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第5章~神々の国へ~
第106話
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最初に会ったのが兄に化けたロキだったから、すっかり自信をなくしてしまったのだ。兄のことは絶対に間違えないと思っていたのに、まんまと騙されてしまった。
自分が兄を想う気持ちはその程度のものなのか、本物と偽物の区別もつかないのかと、内心かなり落ち込んでいたのだ。
「お前ねぇ……」
すると兄は少しだけ立ち止まり、くるりとこちらに向き直った。そして片手で腰を引き寄せると、後頭部を掴んで思いっきり口付けてきた。
「っ!? ちょ、兄う……んっ!」
人目もはばからず唇を吸われ、アクセルは違う意味で膝を折りそうになった。
目を白黒させていると兄は身体を離し、腕を掴んで何事もなかったように歩き始めた。
「あ、兄上……?」
「緊急事態だから我慢してるんだよ。本当は、今すぐにでも路地裏に連れ込みたいくらいなんだ」
「ろ、路地裏……!?」
「テキパキしてるのは、早く解決してお前とデートしたいからだよ。パーティーが終わったら、お前はまたバルドル様のところに帰っちゃうでしょ。だから……」
「……!」
「……というか、それくらい察してよ……もう」
ちょっと拗ねたように唇を尖らせる兄。
それを見たら、なんだか安心してしまった。兄らしからぬ要領のよさは、兄らしい下心があったせいだったのか。
「……そうだな、あなたは本物の兄上だ。変なこと聞いてすまなかった」
きゅんとした気持ちを押し隠しつつそう言ったら、兄はにこりと笑ってくれた。
気を取り直して、ホズを捜し回る。ホズ自身もあまり目立つ体格ではないから、これだけたくさんの神がいると見つけるのも時間がかかった。
自分が兄を想う気持ちはその程度のものなのか、本物と偽物の区別もつかないのかと、内心かなり落ち込んでいたのだ。
「お前ねぇ……」
すると兄は少しだけ立ち止まり、くるりとこちらに向き直った。そして片手で腰を引き寄せると、後頭部を掴んで思いっきり口付けてきた。
「っ!? ちょ、兄う……んっ!」
人目もはばからず唇を吸われ、アクセルは違う意味で膝を折りそうになった。
目を白黒させていると兄は身体を離し、腕を掴んで何事もなかったように歩き始めた。
「あ、兄上……?」
「緊急事態だから我慢してるんだよ。本当は、今すぐにでも路地裏に連れ込みたいくらいなんだ」
「ろ、路地裏……!?」
「テキパキしてるのは、早く解決してお前とデートしたいからだよ。パーティーが終わったら、お前はまたバルドル様のところに帰っちゃうでしょ。だから……」
「……!」
「……というか、それくらい察してよ……もう」
ちょっと拗ねたように唇を尖らせる兄。
それを見たら、なんだか安心してしまった。兄らしからぬ要領のよさは、兄らしい下心があったせいだったのか。
「……そうだな、あなたは本物の兄上だ。変なこと聞いてすまなかった」
きゅんとした気持ちを押し隠しつつそう言ったら、兄はにこりと笑ってくれた。
気を取り直して、ホズを捜し回る。ホズ自身もあまり目立つ体格ではないから、これだけたくさんの神がいると見つけるのも時間がかかった。
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