転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています~ヴァルハラで死合いましょう~

夢咲まゆ

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第5章~神々の国へ~

第11話

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「私も一緒に行くよ。ポストがどこかわからないだろう?」
「いえ、でも世界樹ユグドラシルの近くにあるって……」
「そうだけど、ちょっとわかりにくいから。仕事にも煮詰まっていたところだから、気分を変えるにはちょうどいいよ。散歩に行こう」

 そう言ってバルドルは、椅子から立ち上がった。

「さ、ついておいで。ついでにあちこち案内してあげる」
「は、はい……」

 勝手に歩き始めたので、アクセルも後ろからついて行った。

 バルドルは屋敷を出て、ほとんど人通りのない道を歩き、遠くに見えている世界樹目指して進んで行った。

 ――来る時も思ったけど、全然人と遭遇しないな……。

 道はきちんと舗装されて歩きやすくなっている。道端には植え込みもあって、何かの花が咲いているが、そこを散歩している人はいなかった。天気もいいし、一人くらい誰かと会ってもおかしくないのに、何故誰もいないのだろう。

「誰もいないなぁって思ったでしょ?」

 アクセルの疑問を読んだかのように、バルドルが口を開いた。

「ヴァルハラは、狭い世界に五〇〇〇人? 以上の戦士が閉じ込められているんだろう? それに比べると、ここは人口密度が全然違うから誰もいないように見えるよね。うちのお隣さんは十キロ先だし」
「十キロ!? そんなに離れているんですか?」
「そうだよ。ヴァルハラはせいぜい、離れていても数百メートルだろう? それなら外を歩けば誰かしらに遭遇するけど、ここではそういうわけにいかないんだよね」
「は、はあ……」

 ヴァルハラのことを「狭い世界」だなんて思ったことは一度もないが、神々の世界に比べたら、ヴァルハラはごく小さな箱庭のようだ。
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