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第4章~更なる力を求めて~
第84話
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「夜はある程度がっつりしたメニューがいいかな。残ってるお肉、全部焼いちゃう?」
「全部はさすがに量が多くないか?」
「でも人質に行く前に、食料は全部片づけておきたいじゃない。帰ってきた時、棚がカビだらけになってたら困るし」
「……それは確かに」
とはいえ、明日すぐに出立するわけではないから、多少猶予はあるのだが。
とりあえず、放置したら腐りそうな食材を片っ端からキッチンに並べ、それを使った料理を作ることにした。卵や生肉、野菜はすぐにダメになりそうだったので、それを全部使った料理は何かと考えた結果、「すき焼き」にしてみようという話になった。
ちょうどいい鍋がなかったので、一人用の鍋を作ろうかと思ったのだが、
「あ、それならうちにちょうどいい鍋があるんだ。今から持ってくるね」
と言って兄が一度自宅に帰り、家から土鍋を抱えて戻ってきた。ミルク粥のためにお米を炊いていた土鍋だ。
「ありがとう。わざわざすまないな……重かっただろ」
「ううん、いいんだ。これでお前と鍋するの、夢だったんだよ」
「夢なのか」
「うん。なんか素敵じゃない? 鍋をつついてこそ家族って感じがするんだよね」
謎のこだわりだが、言いたいことは理解できる。大きな鍋は家族が揃っていないと作ることができないから、「鍋をつつく=家族がいる」という図式になるのだろう。
――まあ俺も、兄上と鍋をつついたことは数えるほどしかないしな……。
せっかくの機会だ。早速アクセルは野菜や肉を食べやすい大きさに切り、割り下を作って鍋を火にかけた。
「全部はさすがに量が多くないか?」
「でも人質に行く前に、食料は全部片づけておきたいじゃない。帰ってきた時、棚がカビだらけになってたら困るし」
「……それは確かに」
とはいえ、明日すぐに出立するわけではないから、多少猶予はあるのだが。
とりあえず、放置したら腐りそうな食材を片っ端からキッチンに並べ、それを使った料理を作ることにした。卵や生肉、野菜はすぐにダメになりそうだったので、それを全部使った料理は何かと考えた結果、「すき焼き」にしてみようという話になった。
ちょうどいい鍋がなかったので、一人用の鍋を作ろうかと思ったのだが、
「あ、それならうちにちょうどいい鍋があるんだ。今から持ってくるね」
と言って兄が一度自宅に帰り、家から土鍋を抱えて戻ってきた。ミルク粥のためにお米を炊いていた土鍋だ。
「ありがとう。わざわざすまないな……重かっただろ」
「ううん、いいんだ。これでお前と鍋するの、夢だったんだよ」
「夢なのか」
「うん。なんか素敵じゃない? 鍋をつついてこそ家族って感じがするんだよね」
謎のこだわりだが、言いたいことは理解できる。大きな鍋は家族が揃っていないと作ることができないから、「鍋をつつく=家族がいる」という図式になるのだろう。
――まあ俺も、兄上と鍋をつついたことは数えるほどしかないしな……。
せっかくの機会だ。早速アクセルは野菜や肉を食べやすい大きさに切り、割り下を作って鍋を火にかけた。
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