転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています~ヴァルハラで死合いましょう~

夢咲まゆ

文字の大きさ
上 下
327 / 2,774
第3章~新たなる試練~

第204話*

しおりを挟む
「一応確認させてもらうけど、君は最寄田静香さん……で間違いないよね?」

「は、はい……」

 わたしは頷く。

「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」

 茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。

「……」

 わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。

「うん? どうかした?」

「いや、なんというか……」

「ひょっとして……警戒をしている感じ?」

「ま、まあ、そうですね……」

 一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。

「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」

「そ、そうですかね⁉」

 わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。

「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」

「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」

「それはもちろん、君に用があるからだよ」

「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」

「! ははははは……!」

 青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。

「な、なにがおかしいんですか?」

「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」

 青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。

「え? マー、マーク……? ええっと……?」

「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」

「ス、スペースポリスマン⁉」

 わたしは思いがけないフレーズに驚く。

「そうだよ、ごくごく普通のね」

 ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。

「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」

「そうかい?」

「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」

「初めて?」

 ノリタカさんは驚いて目を丸くする。

「ええ、初めてですよ!」

「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」

 ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。

「はい」

「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」

「そ、それはそうらしいですけど……」

「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」

「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」

「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」

 ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。

「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」

 わたしはその場から離れようとする。

「あ、ちょっと待ってくれ……!」

「はい?」

 わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。

「………」

 ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。

「あ、あの……?」

「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」

 ノリタカさんは頷く。

「は、はあ……?」

「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」

「え、ええ……」

 わたしは露骨に困惑する。

「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」

「いや、どうしてかなって言われても……」

「まだ不信感は拭えていないかな?」

「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」

「作戦を遂行する上での名前だよ」

「それはなんとなく分かりますが……本名は?」

「わけあってそれは明かせない」

「ええ……」

 ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。

「……マズいかな?」

「いや、いいです。失礼します」

「待っているよ」

 わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。

「げっ……」

 裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。

「やあ!」

「……何故ここに?」

「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」

 ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。

「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」

「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」

「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」

「特例で認めてもらったよ」

「そんなことが可能なんですか?」

「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」

「はあ……調査って?」

「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」

「い、異常ですか?」

「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」

「はいいいいっ⁉」

 ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!

Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。 pixivの方でも、作品投稿始めました! 名前やアイコンは変わりません 主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

処理中です...