転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています~ヴァルハラで死合いましょう~

夢咲まゆ

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第3章~新たなる試練~

第135話(フレイン視点)

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 斬られていないのに、胸が痛くてたまらない。アクセルの殺気が腸を抉ってくるようだ。これが死合いだったらさぞ楽しい殺し合いになっただろうに、今はただ悲しみだけが襲ってくる。

 そんなに殺したいなら殺していいよ……と言いたいところだが、さすがに今死ぬのは遠慮したい。今朝棺から出てきたばかりなのだ。二日連続で棺の中で眠るのはちょっと嫌だ。

 フレインは太刀を抜いてアクセルの刃を受け止めた。受け止めた瞬間、剥き出しの憎しみが伝わってきて、それでまた悲しくなった。

 ――そんなに私のこと、憎んでたのかい? アクセル……。

 ここまで来ると、純粋に「毒だけのせい」とも言えなくなってくる。火のないところに煙が立たないように、一ミリでも「目障りだ」とか「殺したい」とか思っていなければ、ここまで殺気が増幅されることはないからだ。

 アクセルが――例え無意識にでも――兄のことを「憎い」と思っていたからこそ、毒によって感情が暴走したのではないか。少なくともフレインはそう考える。

 だとしたら、アクセルが元に戻った時、自分は一体どんな顔をして弟に向き合えばいいのだろう。気持ちを切り替えるのは得意だけど、今回ばかりは「なかったこと」にできる自信がない。それに、弟が少なからず兄のことを「憎い」と思っているのなら、このまま関係を続けていたらまた同じことの繰り返しになってしまう。

 少し距離を置いた方がいいのではないか。お互い冷静になるまで、気持ちの整理がつくまで、しばらく会わない方がいいのではないか。フレインは弟のこと純粋に大好きだけど、そんな風に思われているなら、これ以上嫌われたくないし……。
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