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第3章~新たなる試練~
第49話*
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「このままじゃ……こんな情けないままじゃ、兄上は……いつか俺に愛想を尽かして、他の誰かのところに行ってしまうんじゃないかって……。人の気持ちなんて、永遠に変わらない保証はないし……」
「……そうか」
兄は動きを止めて、静かに言った。
「……お前は自分に自信がないんだね」
「えっ……?」
「自分に自信がないから、私が愛想を尽かしてしまうなんて思うんだ。お前は今のままでも十分魅力的だし、私にない面をたくさん持っているのに、それじゃダメだと思い込んでるんだね……可哀想に」
「か、可哀想……!?」
憐れまれているのか、俺は!? 馬鹿にされるのはいいけれど、憐れまれるのは少々心外である。
けれど兄は淡々とした口調で続けた。
「だってそうだろう? 自分に自信がないから、『こんな自分なんて愛されるわけがない』と思ってしまう。いくら私が『好きだよ』って言っても、その気持ちすら信じられない。それじゃあ不安になって当然だよね」
「う……」
そこまで大袈裟な話ではないのだが、アクセル自身が――誰に言われたわけでもないのに――事あるごとに兄と自分を比べながら生きてきたのは事実かもしれない。
何しろ物心ついた時には、既に強くて美しい兄が隣にいたのだ。アクセルはそんな完璧な兄を常に見ながら生きてきて、いつも「あんな風になりたい」と強い憧れを抱いていた。
だけどそれは逆に言えば、「兄上はあんなに優れているのに、なんで俺はだめなんだろう」という劣等感に他ならない。
――ほんとにだめだな、俺……。
「……そうか」
兄は動きを止めて、静かに言った。
「……お前は自分に自信がないんだね」
「えっ……?」
「自分に自信がないから、私が愛想を尽かしてしまうなんて思うんだ。お前は今のままでも十分魅力的だし、私にない面をたくさん持っているのに、それじゃダメだと思い込んでるんだね……可哀想に」
「か、可哀想……!?」
憐れまれているのか、俺は!? 馬鹿にされるのはいいけれど、憐れまれるのは少々心外である。
けれど兄は淡々とした口調で続けた。
「だってそうだろう? 自分に自信がないから、『こんな自分なんて愛されるわけがない』と思ってしまう。いくら私が『好きだよ』って言っても、その気持ちすら信じられない。それじゃあ不安になって当然だよね」
「う……」
そこまで大袈裟な話ではないのだが、アクセル自身が――誰に言われたわけでもないのに――事あるごとに兄と自分を比べながら生きてきたのは事実かもしれない。
何しろ物心ついた時には、既に強くて美しい兄が隣にいたのだ。アクセルはそんな完璧な兄を常に見ながら生きてきて、いつも「あんな風になりたい」と強い憧れを抱いていた。
だけどそれは逆に言えば、「兄上はあんなに優れているのに、なんで俺はだめなんだろう」という劣等感に他ならない。
――ほんとにだめだな、俺……。
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