転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています～ヴァルハラで死合いましょう～

第２章～溢れる想い～

第６４話

「いや、そんな……。そこまでたいしたことはしてないぞ」
「うん、でもね……こういう日常に弟がいるってすごく久しぶりな気がして」
「……！」
「いいよね、こういうの。まさに家族って感じ」

　にこっと微笑み、シンプルなスープを口にする兄。

　今更ながら兄の孤独に気付いて、アクセルはそっと目を伏せた。

　――そうか、兄上もずっと一人で……。

　十一年前に死に別れ、ヴァルハラで再会するまで離ればなれだった。

　しかも、目標を必死に追いかけていた弟とは違い、兄はひたすらじっと待ち続ける日々。ただ待つだけの十一年間は、気が遠くなるほど長かっただろう。

　もっと言えば、弟がヴァルハラに来るどうかは直前になるまでわからない。待っていれば必ず会えるというわけではない。結果的にはこうしてまた巡り会えたけれど、「もう会えないかもしれない」と考えたこともあるのではないだろうか……。

「兄上……」
「なに？」
「待たせた側が何言ってるんだと思うかもしれないが……その、よく十一年間も待てたな……」
「ああ、私はそこまで長かったとは思ってないから。いつの間にか十一年経ってて、気付いたらお前がこっち来てたって感じかな。歳をとると月日の経過が早くてね」
「……そういうものなのか？　でも十一年間も待たせてしまったことには変わりないよな……」
「結果的にこっちに来てくれたからいいんだよ。それで八割くらい私の夢は叶ってる」
「……夢？」
「うん、生前には叶わなかった私の夢さ」
「それは……？」
「お前と対等になることだよ」

　ああ、それか……と思った。これに関しては事あるごとに「ランク上げ頑張って」と言われていたので、今更驚きはしない。