転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています～ヴァルハラで死合いましょう～

第２章～溢れる想い～

第３６話

　実のところ、男たちに襲われた件に関しては、兄が心配するほど傷ついていなかった。嫌だったのは事実だが、怖いわけではなかった。不快だったし腹立たしかったけれど、それ以外の感情はなかった。その程度のことなので、兄が気に病むことはないと思う。

　アクセルは軽い気持ちでこう言った。

「多分、あれば何かの罰だったんだ。兄上を殺したり、忠告を聞かなかったり……他にもいろいろやらかしたから、バチが当たったんだよ」
「……。ちょっと何言ってるかわからないんだけど」
「え？　だから俺は大丈夫だと……」
「そういう意味じゃない。お前、本当に何言ってるの？　本気であれを罰だと思ってるの？」

　兄の声色に怒りが滲み始めたので、さすがにひやりとした。余計な心配をして欲しくなかっただけなのだが、兄は今の発言が気に入らなかったようだ。

「誰かに犯されることが罰になるはずがない。そういうわけのわからない理屈で自分を納得させるのはやめなさい。お前は自分を軽く扱いすぎだ」
「す、すみません……」
「まったく……本当に呆れるよ。いくらこういうことに無頓着だからって、そこまで馬鹿なことを言うとは思わなかった」

　兄がアクセルの顔を両手で挟んだ。

　殴られるかもと覚悟していたら、コツンと額をぶつけられて驚いた。至近距離で見る睫毛まつげや唇が細かく震えていた。