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第1章~あなたを目指して~
第48話
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「もちろん、その選択が悪いわけじゃないけどね。ただ、お前のように身を挺して子うさぎを守るような戦士はヴァルハラにいないってこと。どんなに実力のある戦士だって、意識的に感覚を保っていないとすぐに獣に堕ちてしまう。……もちろん、私も」
「…………」
「だからお前も、その人間らしさを忘れないようにね。オーディン様の眷属(エインヘリヤル)に獣はいらないから」
「……はい」
それからしばらく二人は無言でいた。泉に辿り着くまで、アクセルは兄に担ぎ上げられたまま、その背中を見ていた。
――兄上の背中は、いつ見ても大きいな……。
年齢は追いついたのに、中身は全然追いつけている気がしない。近づけば近づくほど、未熟でちっぽけな自分を思い知らされる。今もこの通り、無様に負傷して兄に運ばれている始末だ。情けない。本当に情けない……。
「はい、着いたよ」
オーディンの泉に到着し、アクセルは肩から降ろされて正面で抱っこされた。そのまま一緒に泉に入ろうとするので、肩を押して抗議した。
「あ、兄上……じゃなくてフレイン様、もうここまででいいですから……」
「怪我人が遠慮しないの。それに多分、一人だと我慢できないよ。この怪我だとね……」
「え……」
千切れた左足の先に水面が触れた。そのまま少しずつ泉の奥に連れて行かれ、とうとう胸元まで水に浸けられる。
「っ……!」
傷口が痺れるように痛んだ。抉られた脇腹や千切られた左足に水が沁み込み、あまりの激痛に意識が飛びそうになる。
「…………」
「だからお前も、その人間らしさを忘れないようにね。オーディン様の眷属(エインヘリヤル)に獣はいらないから」
「……はい」
それからしばらく二人は無言でいた。泉に辿り着くまで、アクセルは兄に担ぎ上げられたまま、その背中を見ていた。
――兄上の背中は、いつ見ても大きいな……。
年齢は追いついたのに、中身は全然追いつけている気がしない。近づけば近づくほど、未熟でちっぽけな自分を思い知らされる。今もこの通り、無様に負傷して兄に運ばれている始末だ。情けない。本当に情けない……。
「はい、着いたよ」
オーディンの泉に到着し、アクセルは肩から降ろされて正面で抱っこされた。そのまま一緒に泉に入ろうとするので、肩を押して抗議した。
「あ、兄上……じゃなくてフレイン様、もうここまででいいですから……」
「怪我人が遠慮しないの。それに多分、一人だと我慢できないよ。この怪我だとね……」
「え……」
千切れた左足の先に水面が触れた。そのまま少しずつ泉の奥に連れて行かれ、とうとう胸元まで水に浸けられる。
「っ……!」
傷口が痺れるように痛んだ。抉られた脇腹や千切られた左足に水が沁み込み、あまりの激痛に意識が飛びそうになる。
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