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第1章~あなたを目指して~
第45話
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「!? フレインか……!」
「おや、まだ正気は保っていたか」
にこりと微笑み、ランゴバルトの武器を打ち上げる。そして彼の鎧を蹴り、強制的に距離をとらせた。
「イノシシ神を誘き出したって聞いたけど、こんな狩りをしていたとは驚きだ。狩りの獲物としては最高の贅沢だけど、これ以上はだめだよ。わかってるね?」
「……ちっ」
大きく舌打ちすると、ランゴバルトは血に濡れた長戟を担ぎ上げた。
「興が削がれた。俺は帰るぞ」
「おや、狩った獲物はどうするんだい?」
「雑魚どもに運ばせろ。俺は知らん」
そう言い捨てると、彼はその場を去ってしまった。こちらを一瞥することもなかった。
兄が腰に手を当てて小首をかしげる。
「ふむ……相変わらずだね、彼は。私以上に自分勝手だ」
「おーい、フレイン。あっちにいっぱい獲物がかかってたぞ」
ランキング五位のジークもやってきた。あともう一人、目元に赤っぽいシャドウを施した人物もいる。見たことがないが、誰だろう。
彼がやや大袈裟な仕草で額に手を当てた。
「一〇〇メートル毎にイノシシの罠が仕掛けられておりました。それにしても、なんと無粋な罠なんでしょう! わたくしユーベル、熱が出て来そうです」
「熱でもなんでもいいけど、あれ全部運ぶの大変だぜ? 応援頼むか?」
「そうだね。私はお手伝いできないけど、みんなで協力して運んでね」
兄はアクセルの側に寄ると、屈んで手を差し伸べてきた。
「ひどい目に遭ったね。大丈夫?」
「あ……あにう……」
兄上、と呼びそうになり、アクセルはきゅっと唇を噛んだ。そして視線を落とし、小さく言い直す。
「……いえ、フレイン様」
「おや、まだ正気は保っていたか」
にこりと微笑み、ランゴバルトの武器を打ち上げる。そして彼の鎧を蹴り、強制的に距離をとらせた。
「イノシシ神を誘き出したって聞いたけど、こんな狩りをしていたとは驚きだ。狩りの獲物としては最高の贅沢だけど、これ以上はだめだよ。わかってるね?」
「……ちっ」
大きく舌打ちすると、ランゴバルトは血に濡れた長戟を担ぎ上げた。
「興が削がれた。俺は帰るぞ」
「おや、狩った獲物はどうするんだい?」
「雑魚どもに運ばせろ。俺は知らん」
そう言い捨てると、彼はその場を去ってしまった。こちらを一瞥することもなかった。
兄が腰に手を当てて小首をかしげる。
「ふむ……相変わらずだね、彼は。私以上に自分勝手だ」
「おーい、フレイン。あっちにいっぱい獲物がかかってたぞ」
ランキング五位のジークもやってきた。あともう一人、目元に赤っぽいシャドウを施した人物もいる。見たことがないが、誰だろう。
彼がやや大袈裟な仕草で額に手を当てた。
「一〇〇メートル毎にイノシシの罠が仕掛けられておりました。それにしても、なんと無粋な罠なんでしょう! わたくしユーベル、熱が出て来そうです」
「熱でもなんでもいいけど、あれ全部運ぶの大変だぜ? 応援頼むか?」
「そうだね。私はお手伝いできないけど、みんなで協力して運んでね」
兄はアクセルの側に寄ると、屈んで手を差し伸べてきた。
「ひどい目に遭ったね。大丈夫?」
「あ……あにう……」
兄上、と呼びそうになり、アクセルはきゅっと唇を噛んだ。そして視線を落とし、小さく言い直す。
「……いえ、フレイン様」
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