転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています~ヴァルハラで死合いましょう~

夢咲まゆ

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第1章~あなたを目指して~

第13話

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「だけど、集中できないのを人のせいにするのはよくないね。ちゃんと集中していれば周りの雑音なんて耳に入らない。集中できないんじゃなくて、お前が集中していないんだ」

 と、兄に断言される。

「他にもっと集中できない理由があるんでしょ? 悩みがあるなら、お兄ちゃんが聞いてあげようか?」
「そっ……」

 思わぬ言葉に息が詰まった。ぐっ……と奥歯を噛み、手のひらを握り締める。

 ――そんな……正直に告白できるなら、俺だって……。

 実の兄に恋をする。それは当時の倫理からすると、絶対にあってはならないことだった。

 近親相姦は当然のことながら、同性同士の恋愛もタブー視されていた時代である。「兄上のことが好きなんです」なんて口が裂けても言えない。

 それでも、おおらかな兄なら笑って流してくれるかもしれないが、その後よそよそしい態度をとられる可能性はある。下手したら二度と口を利いてくれなくなるかもしれない。

 それは――アクセルにとっては、死ぬより辛いことだ。

「……何でもない。悩みなんてないし」

 血を吐くような思いで、本心とは真逆のことを伝えた。正直、嘘は好きではなかったが、ここで真実を暴かれるよりは余程マシだと思った。

「俺……これからはちゃんと集中して訓練に臨むよ。兄上に心配されないよう、もっと強くなる。だから……」
「…………」

 兄は無言でこちらを見つめた。少し悲しげな顔をしていた。

 やがて小さく息を吐くと、彼は呟くようにこう言った。

「……そうだね。お前はまだ私に追いついていない」
「……!」
「早く強くなりなさい。お前と一緒に戦えるのを楽しみにしているよ」

 そう微笑んで、兄はその場を立ち去って行った。

 その背がだんだん遠ざかっていくのを、当時のアクセルはただ見ていることしかできなかった。
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