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初めてのお稽古編
第38話
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「誰からだったんですか?」
「……祐介からだった。あの後、美和さんに直接問い詰めに行ったらしい」
「え……それで、どうなったんですか?」
「それが……美和さんは『私はそんな指示してない』ってとぼけたそうだ。『全部家人が勝手にやったことで私は何も知りません』って言ったんだってよ。典型的な責任逃れだな」
「……そう、ですか」
母親が自分の悪業を認めなかった。祐介にとっては、そちらの方がショックだっただろう。素直に認めて謝ってくれた方が、ずっと救いがあっただろうに。
(実の母親だからこそ、逆に辛いだろうな……)
血縁関係は時に残酷だ。どんなに嫌だと思っても、なまじ血が繋がっているせいでなかなか縁を切ることができない。五十歳をすぎた大人は性格も変わらないだろうし、根本的な解決は難しいと思う。だから市川に「あの母親をなんとかしてくれ」と言われた時、何も言い返せなかったのだ。
そう思うと、人のいい祐介が至極気の毒になってきた。何とかしてあげたいのに、何もできない自分が情けなくなってくる。
市川がスマホをテーブルに置き、再びソファーに腰を下ろしてきた。
「……ごめんな、面倒臭い実家で。でも夏樹は何も気にする必要ないからな。夏樹が大学に入るまでには家のごたごたもなんとかするから、な?」
「別にそんなに気にしてませんよ。しばらくお屋敷に近づけないなら、その分受験勉強に専念できますし」
「そっか。勉強に関しては俺は応援しかできないけど、頑張ってくれよ?」
「わかってますよ」
くしゃ、と髪を撫でられ、ちょっと面映ゆくなる。
それで肝心のお道具は……と言おうとした時、視界の隅に全く違う道具が飛び込んできた。
「んなっ……!?」
ぎょっと目を剥き、ソファーから立ち上がる。
「……祐介からだった。あの後、美和さんに直接問い詰めに行ったらしい」
「え……それで、どうなったんですか?」
「それが……美和さんは『私はそんな指示してない』ってとぼけたそうだ。『全部家人が勝手にやったことで私は何も知りません』って言ったんだってよ。典型的な責任逃れだな」
「……そう、ですか」
母親が自分の悪業を認めなかった。祐介にとっては、そちらの方がショックだっただろう。素直に認めて謝ってくれた方が、ずっと救いがあっただろうに。
(実の母親だからこそ、逆に辛いだろうな……)
血縁関係は時に残酷だ。どんなに嫌だと思っても、なまじ血が繋がっているせいでなかなか縁を切ることができない。五十歳をすぎた大人は性格も変わらないだろうし、根本的な解決は難しいと思う。だから市川に「あの母親をなんとかしてくれ」と言われた時、何も言い返せなかったのだ。
そう思うと、人のいい祐介が至極気の毒になってきた。何とかしてあげたいのに、何もできない自分が情けなくなってくる。
市川がスマホをテーブルに置き、再びソファーに腰を下ろしてきた。
「……ごめんな、面倒臭い実家で。でも夏樹は何も気にする必要ないからな。夏樹が大学に入るまでには家のごたごたもなんとかするから、な?」
「別にそんなに気にしてませんよ。しばらくお屋敷に近づけないなら、その分受験勉強に専念できますし」
「そっか。勉強に関しては俺は応援しかできないけど、頑張ってくれよ?」
「わかってますよ」
くしゃ、と髪を撫でられ、ちょっと面映ゆくなる。
それで肝心のお道具は……と言おうとした時、視界の隅に全く違う道具が飛び込んできた。
「んなっ……!?」
ぎょっと目を剥き、ソファーから立ち上がる。
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