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初めてのお稽古編
第14話
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「あ、そ。だったら好きにしなよ。道具、間違ったものを使わないように気を付けてね」
「あっ、祐介さん……」
杖をつきながら、祐介が応接室を出て行く。パタンと閉められたドアを見て、夏樹はジロリと市川を睨んだ。
「ちょっと先生、あんな言い方しなくてもいいじゃないですか」
「気にすんな。これくらいいつものことだ」
「だけど、何もあそこまで邪険にしなくたって」
「祐介はちょっとお節介なんだよ。自分の弟子は自分で面倒を見るのが当たり前だ。学校だってそうだろ? 他の先生のやり方に、あーだこーだ口は出さないもんだし」
「それはそうですけど……」
「頼んでもいないのに他人の稽古に口出ししてくるのは、余計なお世話以外の何物でもないんだよ。例え親切で言ってくれたとしてもな」
「…………」
その理屈はわかる。自分の弟子は自分で面倒を見るべき……というのは、至極真っ当な意見だ。夏樹だって理解できるし、間違っているとは思わない。
でも、先程の口調はどちらかというと「邪魔な人を遠ざける」といった意味合いの方が強かったように感じたのだが……。
(先生、ちょっと機嫌悪い……?)
屋敷に足を踏み入れた時から、ずっとご機嫌ナナメ……というか、いつもの快活さが薄れている気がする。
天敵の美和さんに遭遇したからだろうか。それとも、もっと他に引っ掛かることがあったんだろうか……?
「ま、いいや。このまま退散するのもアレだし、ちょっとだけ稽古していくか。本番の前哨戦みたいな感じで」
「え? 前哨戦?」
「ほら、行くぞ」
市川がサッと席を立ち、部屋を出る。慌てて夏樹もそれに続いた。
「あっ、祐介さん……」
杖をつきながら、祐介が応接室を出て行く。パタンと閉められたドアを見て、夏樹はジロリと市川を睨んだ。
「ちょっと先生、あんな言い方しなくてもいいじゃないですか」
「気にすんな。これくらいいつものことだ」
「だけど、何もあそこまで邪険にしなくたって」
「祐介はちょっとお節介なんだよ。自分の弟子は自分で面倒を見るのが当たり前だ。学校だってそうだろ? 他の先生のやり方に、あーだこーだ口は出さないもんだし」
「それはそうですけど……」
「頼んでもいないのに他人の稽古に口出ししてくるのは、余計なお世話以外の何物でもないんだよ。例え親切で言ってくれたとしてもな」
「…………」
その理屈はわかる。自分の弟子は自分で面倒を見るべき……というのは、至極真っ当な意見だ。夏樹だって理解できるし、間違っているとは思わない。
でも、先程の口調はどちらかというと「邪魔な人を遠ざける」といった意味合いの方が強かったように感じたのだが……。
(先生、ちょっと機嫌悪い……?)
屋敷に足を踏み入れた時から、ずっとご機嫌ナナメ……というか、いつもの快活さが薄れている気がする。
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「ま、いいや。このまま退散するのもアレだし、ちょっとだけ稽古していくか。本番の前哨戦みたいな感じで」
「え? 前哨戦?」
「ほら、行くぞ」
市川がサッと席を立ち、部屋を出る。慌てて夏樹もそれに続いた。
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