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初めてのお稽古編
第11話
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「ごめんね。もっとフランクな部屋に通したかったんだけど。他の部屋は今弟子たちが自主稽古中で」
と、祐介が杖を置いてソファーに座り込む。
「空いている部屋がここくらいしか思いつかなかったんだ。でも、寛いでくれていいからね」
「そう気ィ遣わなくて大丈夫だよ。休むなら普通に俺の部屋行くし」
「それでもいいけど、健介の部屋は摩訶不思議なグッズがいっぱいあるからなあ。夏樹くん、ドン引きしちゃうんじゃない?」
「大丈夫だって。秘密のボックスに全部しまってあるから」
そういう問題じゃないでしょ……と思ったが、さすがに実家では妙なアダルトグッズを堂々と置いておけないようだ。親に隠れてエロ本を読んでいる中学生みたいで、ちょっと笑える。
「祐介さん、飲み物をお持ちしました」
応接室の外から声をかけられ、代わりに市川がサッとドアを開けた。家人と思しき女性がお盆に載ったグラスを人数分持って来てくれた。祐介が言っていた梅ジュースだろうか。
「おう、サンキュー。ご苦労さん」
市川がお盆ごと受け取り、テーブルの上に置いてくれる。
「これが例の梅ジュースだ。毎年うちで作ってるんだぜ。夏にはピッタリだから飲んでみ?」
「さも自分で作ってるかのように言わないでね、健介。作ってるのは毎年僕だよ」
「だから俺も『作ろうか』って言ってるじゃん。でも『健介が作るとすっぱくなる』って文句言うだろ」
「でも本当にすっぱいからね。あれじゃ普通の人の口には合わない。……あ、夏樹くん大丈夫だよ。それは僕が作ったやつだから甘くて美味しいはずだ」
「ホントですか? じゃあいただきます」
勧められるままに一口飲んでみたら、甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。身体に梅がぐんぐん沁み込んでいき、一気に生き返ったような心地になる。水分不足になりがちな夏には本当にピッタリだ。
と、祐介が杖を置いてソファーに座り込む。
「空いている部屋がここくらいしか思いつかなかったんだ。でも、寛いでくれていいからね」
「そう気ィ遣わなくて大丈夫だよ。休むなら普通に俺の部屋行くし」
「それでもいいけど、健介の部屋は摩訶不思議なグッズがいっぱいあるからなあ。夏樹くん、ドン引きしちゃうんじゃない?」
「大丈夫だって。秘密のボックスに全部しまってあるから」
そういう問題じゃないでしょ……と思ったが、さすがに実家では妙なアダルトグッズを堂々と置いておけないようだ。親に隠れてエロ本を読んでいる中学生みたいで、ちょっと笑える。
「祐介さん、飲み物をお持ちしました」
応接室の外から声をかけられ、代わりに市川がサッとドアを開けた。家人と思しき女性がお盆に載ったグラスを人数分持って来てくれた。祐介が言っていた梅ジュースだろうか。
「おう、サンキュー。ご苦労さん」
市川がお盆ごと受け取り、テーブルの上に置いてくれる。
「これが例の梅ジュースだ。毎年うちで作ってるんだぜ。夏にはピッタリだから飲んでみ?」
「さも自分で作ってるかのように言わないでね、健介。作ってるのは毎年僕だよ」
「だから俺も『作ろうか』って言ってるじゃん。でも『健介が作るとすっぱくなる』って文句言うだろ」
「でも本当にすっぱいからね。あれじゃ普通の人の口には合わない。……あ、夏樹くん大丈夫だよ。それは僕が作ったやつだから甘くて美味しいはずだ」
「ホントですか? じゃあいただきます」
勧められるままに一口飲んでみたら、甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。身体に梅がぐんぐん沁み込んでいき、一気に生き返ったような心地になる。水分不足になりがちな夏には本当にピッタリだ。
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