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初めてのお稽古編
第9話
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玄関口に立っている女性を見て、やや恐縮しつつ挨拶する。
「ああ、どうも美和さん。ただいま戻りました」
「……あら」
その瞬間、にこやかだった女性の顔が一気に険しくなった。シワを隠していた目元にピシッとヒビが入り、雰囲気も殺伐とし始める。
(うわ……これが噂の美和さんか……)
市川の腹違いの弟・祐介の実母。御家元の正妻である女性だ。夏樹も少しだけ話を聞いたことがある。
なんでも美和は継子の市川を目の敵にしているらしく、顔を合わせれば何かと嫌がらせをしてくるそうだ。だから市川は次期家元にもかかわらずあまり実家によりつかず、必要最低限のイベント事にしか顔を出さないのだという。
実際にこの目で見るまでは半信半疑だったけれど、この態度からして美和が市川を毛嫌いしていることは明らかだった。
これは厄介なところに出くわしてしまったぞ……。
「もう帰ってきたの? しばらく帰って来ないと思ってたのに」
「家元に挨拶したら、またすぐ出て行きますよ」
「あら、そう。でも家元は今留守なの。あなたと違って忙しいから」
「そうですか。まあ急ぎの用じゃないんで、また明日出直すことにします。……夏樹、行こうぜ」
「え? は、はい……」
市川が踵を返したので、夏樹もその後に続こうとした。
その時、廊下の奥から杖のつく音が聞こえてきた。
「ああ、どうも美和さん。ただいま戻りました」
「……あら」
その瞬間、にこやかだった女性の顔が一気に険しくなった。シワを隠していた目元にピシッとヒビが入り、雰囲気も殺伐とし始める。
(うわ……これが噂の美和さんか……)
市川の腹違いの弟・祐介の実母。御家元の正妻である女性だ。夏樹も少しだけ話を聞いたことがある。
なんでも美和は継子の市川を目の敵にしているらしく、顔を合わせれば何かと嫌がらせをしてくるそうだ。だから市川は次期家元にもかかわらずあまり実家によりつかず、必要最低限のイベント事にしか顔を出さないのだという。
実際にこの目で見るまでは半信半疑だったけれど、この態度からして美和が市川を毛嫌いしていることは明らかだった。
これは厄介なところに出くわしてしまったぞ……。
「もう帰ってきたの? しばらく帰って来ないと思ってたのに」
「家元に挨拶したら、またすぐ出て行きますよ」
「あら、そう。でも家元は今留守なの。あなたと違って忙しいから」
「そうですか。まあ急ぎの用じゃないんで、また明日出直すことにします。……夏樹、行こうぜ」
「え? は、はい……」
市川が踵を返したので、夏樹もその後に続こうとした。
その時、廊下の奥から杖のつく音が聞こえてきた。
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