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体育祭編
第43話
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「な? 上手にできただろ? お弁当用の卵焼きだとちょっと柔らかいなって気もするけど、家で普通に出すんだったら最高に美味しいよ。よくできました。偉い偉い」
市川にぐしゃぐしゃと髪を撫でられる。
いつもは鬱陶しくて嫌いな褒められ方も、今は素直に嬉しかった。
「卵焼きができたら、次は唐揚げかな~。でもいきなり揚げ物は難しいかもしれないから、他のものでもいいぞ? 夏樹、味噌汁とかお吸い物、作れたっけ?」
「……まあ、なんとなくですけど」
そう答えたものの、ぶっちゃけあまり自信がない……。
「そうか。お吸い物は実家でもよく出すから、今のうちに得意になっておいた方がいいぞ。あまりに下手くそだと、美和さんにいびられるからな」
「美和さんって……確か祐介さんのお母さんでしたっけ?」
「そう、俺を目の敵にしてる人。彼女にいびられて辞めちゃったお手伝いさん、いっぱいいるからさ。いびるのは俺だけにしてくれればいいんだけど、あれは人間性の問題だから、今更どうにもならないんだよなぁ……」
「…………」
ここでまた、市川の実家の闇を垣間見たような気がした。
「ま、それはそれだ。夏樹が俺の実家で働くのは当分先だから、そこまで心配しなくていいよ。いざとなったら、やり方はいくらでもあるしな」
と、市川は夏樹が作った卵焼きを弁当箱に詰め込んだ。卵焼き以外のおかず――唐揚げやポテトサラダ等は、市川が作ったものだったが。
「ほらよ。今日は弁当箱忘れるなよ?」
「あ……はい、ありがとうございます」
綺麗に包まれた弁当箱を受け取る。
市川にぐしゃぐしゃと髪を撫でられる。
いつもは鬱陶しくて嫌いな褒められ方も、今は素直に嬉しかった。
「卵焼きができたら、次は唐揚げかな~。でもいきなり揚げ物は難しいかもしれないから、他のものでもいいぞ? 夏樹、味噌汁とかお吸い物、作れたっけ?」
「……まあ、なんとなくですけど」
そう答えたものの、ぶっちゃけあまり自信がない……。
「そうか。お吸い物は実家でもよく出すから、今のうちに得意になっておいた方がいいぞ。あまりに下手くそだと、美和さんにいびられるからな」
「美和さんって……確か祐介さんのお母さんでしたっけ?」
「そう、俺を目の敵にしてる人。彼女にいびられて辞めちゃったお手伝いさん、いっぱいいるからさ。いびるのは俺だけにしてくれればいいんだけど、あれは人間性の問題だから、今更どうにもならないんだよなぁ……」
「…………」
ここでまた、市川の実家の闇を垣間見たような気がした。
「ま、それはそれだ。夏樹が俺の実家で働くのは当分先だから、そこまで心配しなくていいよ。いざとなったら、やり方はいくらでもあるしな」
と、市川は夏樹が作った卵焼きを弁当箱に詰め込んだ。卵焼き以外のおかず――唐揚げやポテトサラダ等は、市川が作ったものだったが。
「ほらよ。今日は弁当箱忘れるなよ?」
「あ……はい、ありがとうございます」
綺麗に包まれた弁当箱を受け取る。
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