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体育祭編
第38話
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高校生くらいの若者なんて大抵そうだろうが、朝早く起きるのがものすごく苦手だったりする。夏樹も例外ではなく、朝はなるべく遅くまで寝ていたいタイプだ。そんな早起きをしたら、一日の睡眠時間が足りなくなってしまう。
けれど市川は、ごく当たり前のような顔をしてこう言った。
「六時起きなんてそこまで大したことじゃないよ。最初はキツいかもしれないけど、体内時計が出来上がったら余裕だって。それに、俺の実家では家人は大抵五時起きだぜ?」
「ええっ!? 五時!? 嘘でしょ!?」
「嘘じゃないよ。全員分の朝食用意して、食事をする部屋を掃除して、その日のお稽古の下準備もして……と、やることはいっぱいあるからな。ついでだから、今のうちに早寝早起きにも慣れといた方がいいんじゃないか?」
「…………」
……なんだか一気に自信がなくなってきた。料理も苦手、早起きも苦手な自分が、果たして市川の実家で働けるようになるのだろうか。
「まあ、うちに来るまでまだ数年の猶予があるからな。それまでに少しずつ慣れて行けばいいさ」
「……そうですかね」
「そうだって。夏樹、頑張り屋だからこんなもんコツさえ掴めばすぐ覚えられるさ。……ほら、綺麗になったぞ」
ピカピカのフライパンを渡され、夏樹はじっとそれを見つめた。その重さがズシリと手に響いた。
(なんだか思った以上に大変そうだな……)
いきなり全部は無理だから、少しずつ身につけていこう。
かつては運動大嫌いだったし(というか、今でもあまり好きじゃない)、身体もものすごく硬かったが、毎晩ストレッチし続けた結果、今ではちゃんと一八〇度開脚できるようになった。
必要に迫られれば、人間は意外と頑張れるものだ。
けれど市川は、ごく当たり前のような顔をしてこう言った。
「六時起きなんてそこまで大したことじゃないよ。最初はキツいかもしれないけど、体内時計が出来上がったら余裕だって。それに、俺の実家では家人は大抵五時起きだぜ?」
「ええっ!? 五時!? 嘘でしょ!?」
「嘘じゃないよ。全員分の朝食用意して、食事をする部屋を掃除して、その日のお稽古の下準備もして……と、やることはいっぱいあるからな。ついでだから、今のうちに早寝早起きにも慣れといた方がいいんじゃないか?」
「…………」
……なんだか一気に自信がなくなってきた。料理も苦手、早起きも苦手な自分が、果たして市川の実家で働けるようになるのだろうか。
「まあ、うちに来るまでまだ数年の猶予があるからな。それまでに少しずつ慣れて行けばいいさ」
「……そうですかね」
「そうだって。夏樹、頑張り屋だからこんなもんコツさえ掴めばすぐ覚えられるさ。……ほら、綺麗になったぞ」
ピカピカのフライパンを渡され、夏樹はじっとそれを見つめた。その重さがズシリと手に響いた。
(なんだか思った以上に大変そうだな……)
いきなり全部は無理だから、少しずつ身につけていこう。
かつては運動大嫌いだったし(というか、今でもあまり好きじゃない)、身体もものすごく硬かったが、毎晩ストレッチし続けた結果、今ではちゃんと一八〇度開脚できるようになった。
必要に迫られれば、人間は意外と頑張れるものだ。
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