市川先生の大人の補習授業

夢咲まゆ

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体育祭編

第6話

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「さっき言ったじゃん。お前に会いに来たってさ」
「そのためだけに実家のお仕事サボれるものなんですか? お茶のお稽古とか、毎日あるんでしょ?」
「あるけど、俺にはもともと直弟子はいないからさ。俺が稽古しなくても大丈夫なんだ」
「……いい加減ですね、次期家元のくせに」
「まあ家元業はなりたくてなったわけじゃないからな。俺がいない方が、なんだかんだで実家も平和なのさ」
「…………」

 そう言われると、夏樹としても反論しづらい。

 市川が次期家元になった経緯はある程度把握しているし、実家の居心地が悪い理由もわかっている。何かしらの口実で実家を離れたくなる気持ちも理解できた。

 夏樹も、正直に言うと、市川がこちらに来てくれた方が好都合である。LINEや通話で連絡を取り合うより、直接話した方が会話もスムーズだ。

 それに……。

(いて欲しいと思った時に後ろに立っているとか、どんなヒーローだよ……)

 そんなことされたら、ますます惚れてしまうではないか。自分ではどうしようもないくらい、先生のことが好きになってしまうではないか。

 もちろん口には出さないけど……。

「いやぁ~、それにしてもちょっと懐かしいな」

 と、市川が体育倉庫を見回した。

「俺が勤めてた時は、どこに何があるか見なくてもわかったけど、もしかして一度大掃除でもしたのか? ちょっと配置変わってない?」
「……いや、知りませんけど」
「ほら、この跳び箱なんてさ。前はもっと真ん中にあったのに、壁際に追いやられてる。最近使ってないのか?」

 そう言われてドキッとした。

 夏樹にとって跳び箱は、ある意味でとても思い出深いアイテムだ。これを見るたびに初めての時を思い出し、つい身体の芯が疼いてしまう。

 あの時は跳び箱の上でさんざん犯されたけど、今日はどんなことをされるんだろう。この変態教師のことだから、体育倉庫で二人きりになっておいて何もしないとは思えない……。
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