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春休み編
第35話
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「ありがとうございます、祐介さん。俺、頑張ります」
「そうだね、夏樹くんにはめげずに頑張ってもらわないと。でないと健介が、どうにも腑抜けてしまってしょうがないんだ」
「先生って、そんなに腑抜けていたんですか?」
「まあね。突然学校を辞めて帰ってきた時なんか、半分抜け殻みたいになってたかな。しばらく上の空で、お稽古にも身が入らずに家元にかなり怒られてたよ」
「そ、そうですか……」
先生も意外と情けないなぁ……と思うが、それだけ自分に未練があったということだから、ある意味ではちょっと嬉しい。
祐介は更に言った。
「あれで健介、意外と責任感は強いからね。僕をツーリングに誘って結果的に事故った時だって、かなり自分を責めていたものだよ。別にあれは健介の責任じゃなくて、調子に乗ってスピード出した僕が悪かったんだけど。でも、うちの母にはかなり罵倒されてて気の毒だったな」
「そう……なんですか」
「きみとのことも、かなり悩んでたんだけどね。でも、今日でだいぶ吹っ切れたみたいだ。健介はあの通り結構な変態だけど、これからも仲良くしてあげて欲しい。夏樹くんがいないと、健介も調子が狂っちゃうみたいだからさ」
「……はい、もちろんです」
笑いかけてくる祐介に、こちらも微笑みを返した。水滴がポタ……とつくばいに落ちる音が聞こえた。
(「吾唯足知」……か)
ふと疑問に思い、夏樹は祐介に目をやった。
「そうだね、夏樹くんにはめげずに頑張ってもらわないと。でないと健介が、どうにも腑抜けてしまってしょうがないんだ」
「先生って、そんなに腑抜けていたんですか?」
「まあね。突然学校を辞めて帰ってきた時なんか、半分抜け殻みたいになってたかな。しばらく上の空で、お稽古にも身が入らずに家元にかなり怒られてたよ」
「そ、そうですか……」
先生も意外と情けないなぁ……と思うが、それだけ自分に未練があったということだから、ある意味ではちょっと嬉しい。
祐介は更に言った。
「あれで健介、意外と責任感は強いからね。僕をツーリングに誘って結果的に事故った時だって、かなり自分を責めていたものだよ。別にあれは健介の責任じゃなくて、調子に乗ってスピード出した僕が悪かったんだけど。でも、うちの母にはかなり罵倒されてて気の毒だったな」
「そう……なんですか」
「きみとのことも、かなり悩んでたんだけどね。でも、今日でだいぶ吹っ切れたみたいだ。健介はあの通り結構な変態だけど、これからも仲良くしてあげて欲しい。夏樹くんがいないと、健介も調子が狂っちゃうみたいだからさ」
「……はい、もちろんです」
笑いかけてくる祐介に、こちらも微笑みを返した。水滴がポタ……とつくばいに落ちる音が聞こえた。
(「吾唯足知」……か)
ふと疑問に思い、夏樹は祐介に目をやった。
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