268 / 393
春休み編
第30話
しおりを挟む
「あ、いいこと思いついた」
と、市川がポンと手を打った。
「夏樹と翔太さ、祐介のお客さんってことにしてくれないかな? 俺の元生徒にするより、祐介の友人にした方が絶対いいだろうからさ」
「ああ、まあね……。それは構わないけど」
「おう、サンキュー! じゃ、そういうことで頼むわ。で、ゲストルームなんだけど……」
「それは南側の部屋が余ってるから、そっちを使えば……」
市川と祐介がこまごました話を始めたので、夏樹はそわそわしながら部屋の隅で待機した。畳のシミが視界に入らないよう、あえて何もない床の間を眺めた。
***
結局、夏樹と翔太は祐介のお友達という形で、母屋の南側にあるゲストルームを使わせてもらうことになった。
ここでも市川は「俺の部屋で一緒に寝ない?」と誘ってきたが、夏樹は「何言ってるんですか」とすげなく断った。隔離されている茶室ならともかく、家族が寝静まっている時間帯に堂々とイチャイチャするわけにはいかない。いくらなんでも、そこまで節操なしじゃない。
「……なっちゃん、これからどうするの?」
夜、ゲストルームで寝る準備をしていた時、翔太が話しかけて来た。
夏樹はパジャマに着替えながら、聞き返した。
「どうって、何が?」
「市川先生とのことだよ。仲直りできたってことは、これからも関係は続けるってことでしょ? 卒業するまでは遠距離になるの?」
「あー……まあ、そうか。そういうことになるんだよな……」
そう思ったら、少し不安になってきた。関東圏ならともかく、東京と京都は頻繁に会える距離ではない。市川の実家は電波が届きにくい場所にあるから、連絡も取りづらくなるだろう。
(俺は多分大丈夫だけど……先生、浮気とかしないだろうな?)
と、市川がポンと手を打った。
「夏樹と翔太さ、祐介のお客さんってことにしてくれないかな? 俺の元生徒にするより、祐介の友人にした方が絶対いいだろうからさ」
「ああ、まあね……。それは構わないけど」
「おう、サンキュー! じゃ、そういうことで頼むわ。で、ゲストルームなんだけど……」
「それは南側の部屋が余ってるから、そっちを使えば……」
市川と祐介がこまごました話を始めたので、夏樹はそわそわしながら部屋の隅で待機した。畳のシミが視界に入らないよう、あえて何もない床の間を眺めた。
***
結局、夏樹と翔太は祐介のお友達という形で、母屋の南側にあるゲストルームを使わせてもらうことになった。
ここでも市川は「俺の部屋で一緒に寝ない?」と誘ってきたが、夏樹は「何言ってるんですか」とすげなく断った。隔離されている茶室ならともかく、家族が寝静まっている時間帯に堂々とイチャイチャするわけにはいかない。いくらなんでも、そこまで節操なしじゃない。
「……なっちゃん、これからどうするの?」
夜、ゲストルームで寝る準備をしていた時、翔太が話しかけて来た。
夏樹はパジャマに着替えながら、聞き返した。
「どうって、何が?」
「市川先生とのことだよ。仲直りできたってことは、これからも関係は続けるってことでしょ? 卒業するまでは遠距離になるの?」
「あー……まあ、そうか。そういうことになるんだよな……」
そう思ったら、少し不安になってきた。関東圏ならともかく、東京と京都は頻繁に会える距離ではない。市川の実家は電波が届きにくい場所にあるから、連絡も取りづらくなるだろう。
(俺は多分大丈夫だけど……先生、浮気とかしないだろうな?)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
603
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる