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春休み編

第1話

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 変態教師の実家なんて、すぐに突き止めてやる!

 ……と、思っていたのだが、実際はそこまで容易なことではなかった。

「京都」、「茶道」、「家元」というキーワードで検索をかけても、出てくるのは「表千家」だの「裏千家」だのといったメジャーな流派ばかり。どうやら市川の実家は同じ茶道でもかなりマイナーな流派のようで、それらしき情報はなかなか掴めなかった。

 結局これといった進展がないまま、三月を迎えてしまっていた。

「ああ、もう……っ!」

 夏樹は脱力したように机に突っ伏した。

 検索をかけるには、ちょっと情報が足りないのだ。もっとこう……実家に繋がる決定的な情報が欲しい。

(というか俺、一度先生の本名を聞いたことあるんだよな……)

 その名前で検索をかければ間違いなくヒットすると思うのだが、肝心の苗字が未だに思い出せない。「先生=市川慶喜」で頭に刷り込まれているから、それ以外の名前がどうしても浮かばないのだ。

 先生の本名、なんだっけ……? 筋肉じゃなくて……変態じゃなくて……ええと……。

「なっちゃん」

 もどかしさを覚えていると、翔太が声をかけてきた。彼は夏樹の机の反対側に座り、スマホをいじりながら言った。

「あれから僕もちょっとだけ調べてみたんだけどさ……この写真、見てみてよ」
「え?」

 翔太が見せてきたのは、袴姿の市川の写真だった。袴の正面、背面、側面と、それぞれ数枚撮られている。文化祭の時、離れの茶室で撮っていたものだ。

 それを見たら、なんだか胸が締め付けられるように痛んだ。

 もう何ヶ月も先生に会っていない。あのクリスマス以来だから三ヶ月以上になるか。そんなに長く放置されることなんてなかったから、無性に切なくなってきた。
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