227 / 393
冬休み編
第36話
しおりを挟む
「……なっちゃん? どうかした?」
「あ、いや……なんでもない」
ぼんやりとエレベーターに乗っていたら、翔太に顔を覗き込まれた。
まあ考え事は後だ。まずは先生に会って、たっぷり文句を言ってやらなきゃ。
七階で降りて、市川の部屋の前まで行く。学校終わってすぐの時間帯だから、もしかしたらいないかもしれない……と思ったけれど、とりあえず呼び鈴を押してみた。
反応はなかった。
「……いないみたいだね。どうする、なっちゃん?」
「また行き違いになるのも面倒だしな……。俺は先生が帰ってくるまで、ここで待ってるよ。翔太はどうする?」
「んー……じゃあ僕も途中まで待ってようかな。一人で待ってると、コンビニ行きたくなった時とかいろいろ不便だしね」
「そっか……。ありがとう、翔太」
と、二人でドアの前に座り込みをしようとした時。
「あの~……」
不意に横から話しかけられ、夏樹はびっくりして振り返った。人のよさそうな中年女性が、こちらに視線を注いでいた。
「あっ……すみません、お騒がせして」
「いえ、それはいいんですけど……。そこに住んでいた方なら、つい先日引っ越されましたよ」
「えっ!? 引っ越した!?」
「え、ええ……。うちにも挨拶に来られましたから。背の高い爽やかそうなお兄さんですよね?」
「そ、そうです……! あの、その人どこに引っ越すとか言ってませんでしたか?」
「確か、実家に戻るとか言っていましたよ。実家がどこかは言ってなかったけど」
「…………」
……本気で頭が痛くなってきた。
何の説明もなくいきなり学校を辞め、何も言わずに実家に帰ってしまうとは何事か。
誰に挨拶せずとも、俺にだけはきちんと説明すべきだったんじゃないのか。俺はその程度の存在だったのか。
(あンの変態教師ぃぃ……!)
「あ、いや……なんでもない」
ぼんやりとエレベーターに乗っていたら、翔太に顔を覗き込まれた。
まあ考え事は後だ。まずは先生に会って、たっぷり文句を言ってやらなきゃ。
七階で降りて、市川の部屋の前まで行く。学校終わってすぐの時間帯だから、もしかしたらいないかもしれない……と思ったけれど、とりあえず呼び鈴を押してみた。
反応はなかった。
「……いないみたいだね。どうする、なっちゃん?」
「また行き違いになるのも面倒だしな……。俺は先生が帰ってくるまで、ここで待ってるよ。翔太はどうする?」
「んー……じゃあ僕も途中まで待ってようかな。一人で待ってると、コンビニ行きたくなった時とかいろいろ不便だしね」
「そっか……。ありがとう、翔太」
と、二人でドアの前に座り込みをしようとした時。
「あの~……」
不意に横から話しかけられ、夏樹はびっくりして振り返った。人のよさそうな中年女性が、こちらに視線を注いでいた。
「あっ……すみません、お騒がせして」
「いえ、それはいいんですけど……。そこに住んでいた方なら、つい先日引っ越されましたよ」
「えっ!? 引っ越した!?」
「え、ええ……。うちにも挨拶に来られましたから。背の高い爽やかそうなお兄さんですよね?」
「そ、そうです……! あの、その人どこに引っ越すとか言ってませんでしたか?」
「確か、実家に戻るとか言っていましたよ。実家がどこかは言ってなかったけど」
「…………」
……本気で頭が痛くなってきた。
何の説明もなくいきなり学校を辞め、何も言わずに実家に帰ってしまうとは何事か。
誰に挨拶せずとも、俺にだけはきちんと説明すべきだったんじゃないのか。俺はその程度の存在だったのか。
(あンの変態教師ぃぃ……!)
0
お気に入りに追加
603
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話
赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。
「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」
そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる